明治の策士・大久保利通に学ぶリーダーシップに求められる「忍耐強さ」と「決断力」
官僚制の基礎を築き、明治維新の指導者として知られる大久保利通。長州の木戸孝允(桂小五郎)、薩摩の西郷隆盛と並び倒幕に尽力した維新三傑の一人である。
廃藩置県や地租改正、殖産興業などを推進した改革のリーダーであったが、1878年に東京都千代田区で暗殺され47歳にしてこの世を去る。
なぜ大久保利通が維新のリーダーになったのか、それは彼の「決断力」にほかならない。さらに、ずば抜けて「忍耐力」が強い男でもあった。
記憶に残る時代のリーダーは?と聞かれたら、間違いなく大久保利通もその一人だ。今回は、リーダーシップに求められる決断力と忍耐力を大久保利通から学んでみたいと思う。
リーダーは忍耐強くあるべき
大久保は政治家で策士なイメージがあるが、実は言うほど学力はない。学校の成績で例えるなら、いつもテストは60点といったところ。ただし、生きるための賢さはあった。
目的を決めると、遠回りしてでも結果を出そうと努力する。
妥協を拒まず考え方を変えながら、紆余曲折を繰り返してゴールを目指す忍耐強い精神をもっていた。
薩摩藩主が島津斉彬(篤姫の父)の頃、大久保は藩政の中枢にも参加できない身分だったが、斉彬が亡くなったあと、藩主になった弟の久光に近づこうとする。
目的は、藩政の中枢に加わり、力を得るためだった。しかし、久光と大久保は身分が違いすぎるため、そう簡単に近づくことはできなかったのである。
そして、大久保は良案を思いつく。久光の趣味である囲碁の相手をし、距離を縮めて懐に入ろうと考えた。久光が吉祥院で碁を打っていると知ると、この寺の住職から大久保は囲碁を教えてもらう。
だが、目的はほかにもあった。久光が読みたがっていた古史伝を住職に渡し、久光に会ったときは私を紹介してほしいと頼んでおいたのだ。こうして大久保は、久光に近づく機会を得た。
やがて大久保は久光に認められ、勘定方小頭(経理の責任者)へと大出世する。
紆余曲折してでも目的を達成する大久保らしい忍耐強さがうかがえるエピソードだ。
これをきっかけに大久保は、倒幕・維新に向けて活躍していく。
やがて「王政復古の大号令」を発動し、天皇中心の政治へと世の中を変えていくのである。
リーダーに求められる決断力
徳川幕府が国を治めていた時代、すべての権利を天皇に移行するという改革は命を懸けたクーデターであった。
西郷隆盛が革命家だとすれば、やはり大久保は政治家だ。
大久保は、暴力よりも時や事の流れで周囲を牽引する能力が優れていた。まさに、リーダーシップと呼ぶにふさわしい政治活動を行ってきた人物と言えるだろう。
そして、リーダーに求められる条件が決断力である。情報を分析し、噛み砕いて考え、客観的に検証し、判断する。そうやって決断し、もし失敗したときには自分が責任をとる。
決断とは、単に物事の是非を決めるだけではない。聞く、考える、検証する、判断する、失敗したら責任をとる、このすべてを成すことが「決断」なのである。
つまり、決断とは重い。大久保が維新のリーダーと言われる理由は、周囲を牽引する決断力をもっていたからだ。
倒幕を実現させ、明治政府を確立した真のリーダーと言える。
真のリーダーは目的意識が高い
西郷隆盛、木戸孝允、岩倉具視、坂本龍馬、伊藤博文、板垣退助、大隈重信など、倒幕・明治維新に尽力したリーダー格の人間は複数いる。そのうちの一人が大久保利通。
目的を達成するために、それぞれの人物に独自の“やり方”がある。大久保の場合、「権謀術数」で目的を成し遂げようとする傾向が強い。
権謀術数の傾向が強かった大久保は、物事を成そうとするとき結果から逆算し、あらゆる可能性を検討して利用できる手段は何でも使うという策略的な考え方をもっていた。
倒幕・明治維新のほかにも、大久保が命を懸けて取り組んでいた改革が「富国強兵」である。
大久保は開国派であったが、富国強兵の実現を目指すために攘夷派(鎖国主義)とも仲良くしたり、ときには幕府を利用して話を進めたり、策略的な一面も多い。
目的意識が高いからこそ、あらゆる手段を講じて可能性を高めていったと言える。また、大久保は私欲を捨てることにも徹していた。
なぜなら、権謀術数は利己的な考えと思われやすいため、私欲に対して反感を買いやすいからだ。あくまでも政治のため、そう割り切って私欲を捨てた。
その証拠に大久保は、官職という地位に就いていたにも関わらず、亡くなったときの遺品整理から贅沢な暮らしぶりや私欲の痕跡は見当たらず借金まみれだったという。
表向きは権謀術数でズル賢いと思われながらも、実際は自費で経費を工面し、借金まみれになってまで目的達成のために働くほど目的意識が高い男だったのだ。
リーダーシップの条件とは?
最後に、リーダーシップに求められる条件をチェックして終わりにしたいと思う。大久保利通を照らし合わせながら、リーダーとは何かを学んでみよう。
・リーダーにカリスマ性はいらない
・リーダーシップは手段に過ぎない
・リーダーシップとは仕事である
・リーダーシップとは責任である
・リーダーシップとは信頼である
リーダーに求められる決断力とは、情報を分析し、噛み砕いて考え、客観的に検証し、判断すること。そして、失敗したときには自分が責任をとる。
聞く、考える、検証する、判断する、失敗したら責任をとる、このすべてを総称して「決断」や「意思決定」と呼ぶことを心得ておきたい。
また、リーダーは、目的意識を高くもって遠回りしてでも結果を出そうと努力する。
妥協を拒まず考え方を変えながら、紆余曲折を繰り返してゴールを目指す忍耐強さが必要になる。
計画性だったり方向性を示したり、結果に導く手段を与えられる人物が本当の意味でリーダーと言えるだろう。
さらに、リスクを背負う覚悟もリーダーシップに求められる条件だ。
リーダーシップにカリスマ性はいらない。いうなれば、誰でもリーダーになれる。今後あなたが率先して自ら物事を動かすとき、ぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。