受け手から作り手へ! クリエイティブ気質を養うために、心がけたい”普段”の物事の見方。
世の中には様々なモノ・コトで溢れている。
情報が絶え間なく流れ込む昨今、以前にも増して触れる機会が多いだろう。
しかし、そのためか、私達は物事を軽んじて見てしまいがちだ。
なぜ、それがそこにあるのか?
どうやって、それが生まれたのか?
そんな”問い”を考える暇もなく、次の物事に手を出している。
常に最新の物を追い続けることは、競争社会、情報社会において、必要不可欠な能力だと思う。
とはいえ、それでは、せっかく仕入れた情報も、製品も、あなたの中に残らずに消えてしまうだろう。
改めて、私達は”物事の見方”を問い直す必要がある。
それは、仕事面のスキルUPや素晴らしい実績を残すためだけではない。
これからの人生をより豊かに生きるために、必要なことだと思う。
今回は、習慣化させた頂きたい2つの物事の見方をご紹介。
自らの行動や思考と照らし合わせながら、読み進めて頂きたい。
なぜ、好きなのか。なぜ、嫌いなのか。
私達は、常に何かと何かを比べながら生きている。
本、映画、音楽、料理、思想、価値観……
世の中にある全てのモノ・コトを好き・嫌いで判断している。
人間とは、そういう生き物だ。
そして、大多数の人がそれで満足してしまっている。
私はコレが好き、アレが嫌い。
何かを見たり聞いたり触れたりしたとき、口から出てくるのはその単語のみ。
もちろん、それが悪いというわけではないが、もっと仕事で実績を残したい、さらにクリエイティブに富んだ生き方を望むのなら、自分の好き嫌いに真正面から向き合い、そして掘り下げるべきでは、だいだろうか?
どう向き合い、どう掘り下げるのか。
そんなに難しい話ではなく、自分がなぜその判断を下したのかを考えるクセをつけることだ。
広告業界を牽引するコピーライターの一人、谷山雅計。
彼は著書『広告コピーってこう書くんだ!読本』において、コピーを書く上での基礎、いや全ての仕事、全てのクリエイティブにおける真髄を冒頭部分で述べている。
明日から、あなたの毎日の生活のなかで、『なんかいいよね』という言葉を禁句にしてほしいのです。
(中略)
そして、かわりにこう考えてみてください。
『なぜいいのか。これこれこうだからじゃないか』『なぜカッコいいのか。こういう工夫をしたからじゃないか』と。
こういう思考を動かすことができなければ、賭けてもいいですが、あなたはけっして『モノのつくり手』になることはできません。
一生、『受け手』のままで終わると思います。
受け手は、「なんかいいよね」で好き嫌いの判断を終える。
作り手は、「なぜいいのか。こうだからじゃないか」と好き嫌いを掘り下げる。
その思考体質を身につけることで、はじめて、私達は物事がどのように成っているのかを知り、そして、それを糧として新たな物事を生み出せる力を養えるようになるのだ。
それは、“自分自身を知る”ことにも繋がるような気がする。
もちろん、受け手が悪いというわけではない。
その点は谷山さんも同書で述べているが、しかし、何らかの仕事に携わっている以上、私達は常に作り手側にいるべきではないだろうか。
そのほうが実績を残せるし、評価もされるし、なにより、働いていて楽しいと思えることが大きなメリットとなるはずだ。
好き嫌いで終わらず、「なぜ」と問い続ける。
是非、明日からの習慣にして頂きたい。
背景に広がる物語に目を向ける。
今朝、あなたはコンビニで何を買っただろうか。
水? コーヒー? 昼用のお弁当? 通勤時に読むための新聞?
いずれにせよ、私達は何らかの製品・商品を購入して生活をしている。
しかし、そこで立ち止まって考えてみてほしい。
あなたが手にした製品・商品は、誰がどのように作ったのか、どうやって自分のもとに届いたのか。
魔法のように、瞬時に店頭に並んだわけではない。
何らかの経緯や背景があって、はじめて、そこに在るのだ。
例えば、少し前から脚光を浴びている伝統工芸。
何年も修行を重ねた熟練の職人が、ひとつひとつ丁寧にモノづくりと向き合い、製品を作り上げていく。
伝統工芸の素晴らしさにピンとこない人も、製品がどのような想いで作られているのかを知れば、感銘を受けるだろう。
つまり、私達は何かを購入するとき、
単純に製品を買っているのではなく、その背景にある物語を買っていることになる。
それは伝統工芸だけではない。
コンビニ売られている、ペットボトルの水だって同じことだ。
どんな成果にもそれを成り立たせているプロセスや下部構造が必ずあり、人はその全体を感じ取っている。
安いとか便利といった理由でなされる買い物がすべてじゃない。
買い物は時に、つくり手に向けた共感や敬意の表明でもある。
(中略)
ある監督がつくるアニメーションが大好きで、何度も観る。
(中略)
風でふくらむカーテンも、遠い星のまたたきも、すべてこの人がこれまでに心を動かされてきた事々のかたまりなんだよな、ということを思う。
自分が食べているのはどうもただの食べ物ではないし、観ているのもただの映像じゃない
私達は、いつも大事なことを忘れてしまう。
忙しかったり、自分に余裕がなくなると、目の前のことで精一杯。
それは仕方のないことかもしれないが、基本となるベース、大切にしたい物事の見方に、いつも帰れるようにしておきたい。
それは、製品・商品の背景にある物語に気づくことも同じ。
常に感謝すべきだと言いたいのではなく、そこに在る幸福やなぜここに在るのかを考えるクセは意識すべきだろう。
西村さんの『自分をいかして生きる』で述べられていた気づきにせよ、先述した谷山さんの思考体質にせよ、普通の人よりももう一歩踏み込んで物事を観ることが、あなたの豊かな精神や思考を育むきっかけになるはずだ。
おわりに
自分に「なぜ」を問い続ける、物事の物語に目を向ける。
それは、あなたが仕事をする上で常に意識すべきことだ。
クリエイティブの基礎中の基礎、ベースともいえる姿勢だが、いわゆるクリエイターに属していない人にも当てはまることである。
いや、むしろ今後の社会・会社は、全ての人にクリエイティブ気質を求める。
そうなったとき、あなたが受け手のままでいると、少々居心地が悪くなるだろう。
昨今のトレンドとして、単純な商品価格ではなく、その背景にある物語やこだわりに、私達は目を向けるようになっている。
それは、値段で差別化を図れないという理由もあるのだろうが、あまりにも物や情報が溢れすぎて、どれを選べばいいのか分からなくなっているともいえる。
そこで、あなたは作り手としてどのような工夫を凝らすだろうか。
そのとき、頭の中で「?」が浮かんだのなら、今回ご紹介した物事の見方が、きっと役に立つはずである。