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明治神宮・鎮守の社にみる、”使命”の伴った仕事観。

東京の真ん中に、こんな森があるんだね。
野鳥の囀りと木々の擦れる音に包まれる小径で、目の前を歩く観光客の会話が聞こえてくる。
多くの人が同じ感想を漏らすのも、無理もない。
最先端のトレンドが発信されている街・原宿から「明治神宮」は目と鼻の先にあるのだから。
表参道から明治神宮に一歩踏み入れれば、まるで異世界に迷い込んだかのような錯覚に襲われるのだ。

今や国内外から大勢の観光客が訪れる人気スポット。
しかし、果たしてその中の何人が、明治神宮に秘められた物語を知っているだろうか。
そこには何百年、何世代にも渡って繋いでいく、壮大なプロジェクトが密かに進行している。
その真意を知ったとき、あなたは自身が担っている仕事を改めて見つめ直すだろう。
そして、内に秘めた”クリエイティブ精神”が湧き上がるはずである。

都会の真ん中に鎮座する森

明治神宮の秘密を探るため、まずはその歴史を紐解いていこう。
そもそも、明治神宮の建造計画は、明治45年(1912)に明治天皇が崩御したことに始まる。
日本全国の”天皇をしのぶ声”が高まり、明治天皇を祀る神社の創建が求められたのだ。
建設地は、所以のあった都内各地。
いくつか候補があがっていたが、そのなかのひとつが、現在の”代々木”というわけである。

しかし、当時の代々木は、森や緑の片鱗もない荒れ地。
丸裸の場所に神社を建てるわけにもいかず、鎮守の杜が求められた。
そこで立ち上がったのが、「荒れ地に新たな森を造る」というとんでもない計画。
日本全土をあげた、一大プロジェクトが始まったのだ。

約11万人が集った、巨大プロジェクト

1915年に竣工した鎮守の杜・創造計画。
それに携わったのは、3人の天才たち。
日本初の林学博士であり、”公園の父”とも呼ばれていた「本多静六」を筆頭に、弟子である「上原上原敬二」と「本郷高徳」が担うことになった。
彼らが目指したのは、明治神宮を”永遠”に守り続ける森。
日本の未来に残していく、受け継いでいく、永遠に枯れることのない人工の森を造ることだった。
その構想をまとめた『明治神宮御境内林苑計画 』には、50年・100年・150年の3段階で、森がどのように成長していくかの計画図が記されている。

最も驚くべきことは、人が手を加えるのは最初の植樹のときだけという計画。
そもそも、里山などに広がる森は、人の手入れが施された人工の森。
本多静六たちは、あくまでも自然の森を造ることにこだわった。
明治神宮があった場所に広がっていたであろう、原生林の復活を目指したのである。

そこには、「鎮守の杜を日本の未来に残していこう」という、先を見据えた仕事、次世代に受け継いでいける仕事への誇りやこだわりがあるように思えてならない。
彼らの確固たる意志と熱意が、時の総理大臣・大隈重信の反対を押し切り、日本全国から約11万人の作業員を集めるまでに至った。
日本をあげてのビックプロジェクトは、大正9年(1920)の明治神宮創建の日を無事に迎えることとなる。

鎮守の杜にみる、使命の伴った仕事

明治神宮の森を150年かけて完成させる。
そんな突拍子もないプロジェクトに挑戦した、本多静六たちの熱意に感服だ。
そもそも、自然界において、荒れ地に森を成すには数百年かかるとされている。
それを、彼らはわずか150年で達成しようとしたのだ。
自信や裏付データだけではない、それをやりきろうとする熱意がなければ、決して始められない仕事だっただろう。

では、本多静六たちをそこまで動こかした要因はなにか。
様々な意見や事実があるだろうが、先に述べた通り、「日本の未来に残る仕事がしたい」という意欲があったのは間違いないと思う。
自分たちの仕事が数年単位で終わるものではなく、自分たちの死後も残り続けるものにしたい。
少なくとも、そういう熱意を持って取り組んでいたはずである。

日々、私達は何らかの仕事をしながら生きている。
しかし、目の前の仕事に熱意や誇りを抱けているだろうか。
次世代に残るような、世の中の人達に何らかのプラスになるような、意味や価値を見いだせているだろうか。

“使命”という言葉がある。
この言葉に対して、私達は真剣に向き合えているだろうか。
その答えとなる糸口が書かれているのが、働き方研究家・西村佳哲さんの名著『自分の仕事を考える3日間 I』。
そのなかで、『Re:S』の編集長を務めていた、藤本智士さんのインタビュー模様が掲載されている。
藤本さんの”使命”という言葉に対しての答えが、まさしく言い得て妙なのだ。

使命って、<命を使う>って書く。
生まれてきて、自分の命を何に使うのかってことなんだ、っていう話を構成作家の倉本美津留さんがしてくれて。
命をどう使うか。
その使命がより肩書きに近いといい。
『肩書きは何ですか?』っていう問いは、僕には『あなたの使命は何ですか?』っていうことです。
それが、なにか一つに定まっているのは、重要なんじゃないかな

出典: 西村佳哲『自分の仕事を考える3日間 I』弘文堂

どんな仕事をするか。どんな想いで働くのか。
それはつまり、自分の命をどのように使うのか、ということに繫がる気がする。
今は生きるだけ、自分のことだけで精一杯。
生活や家族という”責任”が伴うと、どうしても考える余裕がないかもしれない。
しかし、一生のうちに一度でもいい。
歴史に名を残すとまではいかなくとも、自分の命をかけてもいいくらいの仕事にチャレンジしてみようではないか。
それが実現できなくとも、そのような姿勢で仕事に取り組んでいる人に、私達は付いていきたいと思うものである。
本多静六たちの計画に、日本全国から数十万人の協力者が名乗り出たのと同じように。

おわりに

2020年、東京でオリンピックが開催される。
偶然か、必然か、同じ年に『明治神宮鎮座百年祭』が行われる予定だ。
本多静六たちが始めたビックプロジェクトが、100年という節目を迎えるのである。
検証結果によると、彼らが想定していた以上に、鎮座の杜は順調に成長しているらしい。
いや、なによりも、東京都内を上空から見下ろしたとき、そこに緑豊かな森が広がっていること自体、計画の成功と言えるだろう。

2070年、2120年、2170年。
今より遠い未来に、自分は何を残せるのか? どんな使命を持って、仕事をしていけるのか?
今度の休日、動植物の声に耳を澄ましながら、明治神宮で物思いに耽ってみるのもいいかもしれない。

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