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【春風亭昇々さんインタビュー】技より“誇り”を。人生は自分で切り開く

落語家になったのは運命、なのかもしれない

春風亭昇々さんが落語をやりたいと思ったのはどうして?

お笑いがずっと好きだったんですよ。
切っ掛けは、関西学院大学の新入生歓迎会で、落語研究会の人から「見学に来ない」と誘われて行ってみたことでした。そうしたら面白い人が多いし、親切にしてくれたので入部しようと。それが落語との出逢いですね。

関西では漫才が主流だと思いますが、漫才には興味はなかった?

漫才の部活がなかったんです。サークルみたいなのはあったかもしれないけれど、部活としてちゃんとやっているのは落研しかなかった。
漫才はやってみたことあるのですが、2人の掛け合いがなかなか難しくて。呼吸を合わせるのが上手くいかなくて、すぐに嫌いになっちゃいました。
落語だったら自分で話を作って、自分で演じて、演出もできる。
そんなシンプルなところに魅力を感じました。古典落語はそんなに面白いとは思わなかったんですが、落語というスタイルは自分にあっていると思いました。

いつからプロの噺家になろうと思われたのですか?

大学4年の夏くらいですね。
落語以外の道に行こうとは思わなかったんです。プロになるには誰に弟子入りするのかが問題となるわけで。
テレビ番組『平成紅梅亭』で後に師匠となる春風亭昇太が落語をやっていたんですね。それがすごく面白くて。
それから春風亭昇太の高座をよく聞きに行くようになりました。

それで、春風亭昇太さんに弟子入りするんですね。

新宿の末廣亭で出待ちして、話をさせてもらったのですが、その日は「弟子入りしたい」とは言えなくて帰ったんです。
で、2日くらいしてもう一回行ってお願いしました。
そうしたら「連絡先教えて」というので「履歴書書いてきました」と言って履歴書渡して(笑)。
「一か月後くらいに連絡するかもしれない」と言われて待っていたら電話があり、「今、横浜のホールにいるんだけど、ちょっと楽屋に来れる?」と。
僕は兵庫県に住んでいたんですけど、「行きます」と言って新幹線に飛び乗って横浜まで行きました。
後で師匠にその話をしたら「別にそこまでして来なくてもよかったのに」と言われましたけどね(笑)。

チャンスですからね。それは新幹線で行きますよね。

僕は頼めば弟子入りできるもんだと、断られるとはまったく思っていなかったんです。
実はその頃、師匠は弟子をひとりも取っていなかったんですよ。弟子入りの話は全部、断っていたらしいんです。
でも、取らないといけない時期に来ているし、周りからも取るように言われている、ということだったんです。

タイミングもよかったんですね。

横浜で話をし、そのときは「君がいいならいいけど、1日考えて連絡してくれる?」と言われて、次の日に「ぜひ」と連絡を入れました。
確かにタイミングが良かったんですね。
僕はそういうことが多くて。
偶然だけど必然というか、なるべくしてなる、ということが多いんですよ。

それが運命なのか、それとも自分が引き寄せているのかはわからないんですけど、見えない力が働くような気はしています。

落語=古典落語と認識されることに対して戦う

春風亭昇々さんは新作落語に取り組んでいらっしゃいますね。

落語というのはもともと、日常を描いているものだと思うんです。
多くの話は江戸時代の話なんだけど、それは江戸時代に江戸の日常を描いていたからなわけで。現代の日常を描くことが本来の落語だと思っています。
よく、「落語」と「新作落語」と区別されるけれど、そうじゃなくて、「古典落語」と「落語」と言って欲しいって僕は言っています。
常に「今」の日常を描くのが「落語」なんです。
そう言うと「着物じゃなくて洋服でやればいい」と言われるんですけど、落語という、座布団の上に正座して着物を着てやるというスタイルがいいんですよ。
着物と扇子と手拭いがあれば何でも表現できる。いろんなものをそぎ落とした形が落語というスタイルなんです。

浮世絵も当時の先端の風景や美人を描いていたわけですからね。

そうなんですよ。落語がどんどん日常から離れて行ってしまっている。
江戸時代の文化と今の文化はぜんぜん違う。
江戸時代の生活は僕たちに馴染みがないじゃないですか。
日本なのに外国の話をしているようで。だから、現代の話をしたいんです。

どんなふうに落語を作っているんですか?

昔なかったような感情だとか、みんなが共通して持っているものってなんだろう、というところから考えています。
朝、目覚ましで起きて電車に乗る。会社での人間関係、上司や部下、同僚の関係とか、仕事のこと、家族のこと、子どもだったら学校のこととか。そういう根本となる話題を入れてストーリーを作っています。
落語はストーリーがないといけないと思っています。

お客さんの反応はどうなんですか?

これは難しいですね。
落語=古典落語と思っている人は多いので、「古典落語聞きたかった」という人は、特に年配の方には多いです。
自分がこんなふうに表現したいと思っても、お金を払って来てくれるお客さんのためにやるべきなので。自分のためにやるわけにはいかないですからね。

難しさはありますね

でも、高座はたくさんあるので、今日できなくても明日できればいい。古典落語でやりたい話もあるし。
大きな目標としては、「古典落語」と「落語」という認識を植え付けたい。
落語家は落語を作るのが当たり前、という環境にしたいですね。
芸術って自分を表現するものだから、自分で話を作ることは当たり前だと思うんです。
画家が絵を描き、音楽家は音楽を作る。落語も同じ。それが本来の形だと思っています。

落語は受け継いで行くだけでないと。

落語って多くの人が「こういう形でこれが正しい」と思っているんだけど、落語は芸術だと考えると、芸術は自分なりのやり方で表現することだと思うんです。
落語はただ喋ってるんじゃなくて、口調や声の強弱とかリズムとかもあるし、顔や手の動きなどいろんなものが組み合わさって落語になる。
そこは自分のオリジナルでいいと思うんです。だから、話もオリジナルで、自分の落語をやる。古典落語だけが正しいのではなくて、そんな落語がスタンダードなんだと、そこを目指したいと思いますね。

これからはそこをより、目指していく?

落語に必要なのは技術と精神力だと思います。
技術は落語の上手さ。これは積み重ねて行くものだと思います。
自分の思った通りに表現できるようになりたい。精神力も付けて、自分が面白いと思ったことにお客さんが笑わなくとも、「なんで笑わないんだ」くらいの気持ちを持ちたいと思っています。

まだ、思い通りにはならないので、今年、33歳なんですが、30代半ばくらい、あと2~3年で自分が思っているようなやり方を自由自在にできるようになりたいというのはありますね。二ツ目の間にひとつの形を作りたいと思っています。
僕のこの考え方は落語界では邪道だと思われるんですが、いままで通りにやっていたら、今まで通りにしかならないと思うんです。
だから、僕はあまり落語を見ないようにしています。これも言ったら怒られるんですが、なるべく別のもの、映画や演劇を見るようにしています。

落語は伝統芸能と大衆芸能の狭間にあるんですね。
だからこういう問題が出て来る。
残っていくものは残って行くし、そうでないものは消えて行く。それでいいと思うんです。
現代には現代の落語あって、未来には未来の落語あってもいい。江戸時代だけが全てだとは思ってないんです。
現代の落語でスマホが出てきて、それが未来、スマホがなくなった時代で語られるようになったら面白いと思うんです。スマホを手拭いで表したりして。スマホがなくなった未来でも手拭いはあるみたいな(笑)。

自信を持つことが一番、大事

落語とビジネスにおけるプレゼンとは共通点があると思っているのですが、いかがでしょうか?

プレゼンとかはよくわからないのですが、「伝える」ことに「技」が必要だと考えてしまうのですが、それって表面的なもので、本質はそうではないんですよね。

この間、女子高生に面白い話のやり方を教えてくれと頼まれて講演をしたんですが、やっぱり「技」なんてものはないなと思いましたね。自分でも気づいていなかったんですが、「気持ち」なんですね。「何故、それを伝えたいのか?」ということに尽きると思います。そこに「本気」がないといけない。
根本的な話になっちゃうけど、仕事が好きで、仕事を素晴らしいと思っていて、プレゼンする内容を本当に相手に伝えたい、という想いが必要だと思うんですよ。

そういう気持ちで伝えたいと思ったら、声を高くして、眼を見開く、というのはひとつの方法としてはありますね。
後は落ち着いてゆっくりしゃべる。場を恐れない。焦ったときほど間を置く。
焦るとついつい早口になっちゃうんです。
そんなときこそ、ゆっくりとしゃべるのが大事です。噛んでもあわてない。

それに、はったりをかませばいいんですよ(笑)。

落語に取り組むうえで「伝える」ためにどんなことを気を付けていらっしゃいますか?

試行錯誤していますね。
思いついたネタはスマホに書き込んでいますが、メモ帳も持ち歩いていて、気づいたこととはメモしています。
落語はプレゼンすることが仕事。

僕の場合、たとえお客様が笑わなくともいいや、というくらいの気持ちでやっていますね。
人の気持ちは変えられないじゃないですか。僕の声が嫌いな人に好きになってもらうのは難しいし、僕の顔が嫌いな人に好きになってもらうのも難しい。
だからこそ、僕ができることは僕の本音を伝えることしかできないんですよ。
それがダメならダメですよね。落語も気持ちが大事なんです。
「今日はウケそうにないな」と思ったらウケないし、「今日は絶対にウケる」と思ったら上手く行くんです。
本当に気持ちを出すだけですね。メンタルが大事。自信を持つことだと思います。
その自信を持つためには日頃から頑張る。「こういう考えでいままで仕事してきたから大丈夫だ」と。それが自信になる。
そこをガッと伝える。

伝えたら後は何を言われてもいい、僕にはそういう気持ちがありますね。

春風亭昇々さんにとっての“粋”とは?

「誇りを持つ」ということなんじゃないでしょうか。自分の人生は一回しかない。
自分自身の生き方で生きることが“粋”だと思います。
自分で考えて、自分でルールを作って、自分で生きて行く。
誰に何を言われようと貫く。

そういうことだと思っています。そういう姿勢に人は感動すると思うんです。
落語は笑いと感動だと思いますが、感動してもらうためには、突き進んでいく力が必要だと思います。自分の理論を構築して、自分の落語を作っていくことに人は感動してくれると思っていて、そうしたいと思いますし、そうあるべきだと思っています。
だから、古典落語をただ、上手くやるだけで「どうだ!」みたいなの見ると腹が立つ。
先人の師匠たちが作った武器を使って偉そうにするなと(笑)。

まさに今、“粋”な生き方をされている、ということですね。

「古典落語を勉強しないとダメだ」とか「勉強しないでしょ」とかよく言われるんですが、その考え方は根本的に違うと思うんですよ。
違う考え方の人も認めるべき。僕は古典落語を否定していないんだから、僕を否定しないで欲しいと思います。
落語界はそういう世界じゃないというのはわかっています。
批判されることもある。だから「そうですね。そうします」と流されるのはラクです。
でも、僕は自分のやり方を自由に模索しながらやって生きたと思っています。

春風亭昇々(しゅんぷうていしょうしょう)
本名:柴田裕太、1984年11月26日、千葉県松戸市生まれ。落語家。
千葉県立小金高等学校、関西学院大学文学部卒業。2007年、春風亭昇太に入門す。
2011年、二ツ目に昇進。出囃子は、だんじり。公益社団法人落語芸術協会所属。
2015年、2016年、NHK新人落語大賞決勝進出。2016年、「千両みかん」「初天神」「誰にでも青春2」「寝坊もの」で、渋谷らくご大賞を受賞。

YouTube公式チャンネル:アバンギャルド昇々

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