粋な江戸っ子の登竜門! 初心者が、落語を嗜む前に押さえておきたい”4つ”のポイント
最近、巷で”落語ブーム”が巻き起こりつつある。
江戸の小粋な噺をリズムよく、面白おかしく、オチをつけて客を楽しませる落語。
これまでの人生で、一度も触れたことがない人も多いだろう。
その理由のほとんどが、「自分には敷居が高い気がする」という答え。
しかし、それは大きな勘違いだ。
そもそも、落語は一般庶民のための嗜み。
漫才やコントを知っているなら、問題なく入り込める世界である。
いや、むしろ、漫才においては、落語から作法を学んでいるといっても過言ではないだろう。
あなたが思っているほど、落語は難しくない。
明日にでも落語家が舞台に立つ”寄席”を訪れても、十分に楽しめるだろう。
とはいえ、いきなり未開地へと足を踏み入れるのは気が引ける。
そこで、今回は落語を嗜む前に押さえておきたい、4つのポイントをご紹介。
入門者必見&保存必至の内容である。
その1:落語の”歴史”を知っておく。
まずは、「落語とは何ぞや?」を押さえておこう。
落語とは、”オチ”のある噺(はなし)のこと。
衣装や舞台装置などは極力使わず、商売道具は自身の口と手と体だけ。
身振り手振りで一人何役もこなし、噺を進めていく。
最もシンプルな芸能といえるだろう。
ちなみに、江戸発祥の落語を”江戸落語”、大阪・京都が中心の落語を”上方落語”と呼ばれる。
もともと、落語家は”御伽衆(おとぎしゅう)”と呼ばれていた。
室町時代末期から安土桃山時代にかけて、名だたる戦国大名に仕え、話し相手をしたり、世情を伝える役目を担っていたのだ。
例えば、浄土宗の僧侶・安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)。
豊臣秀吉の前で滑稽なオチをつく噺を披露し、大いに誉め称えられたそうな。
その後、江戸時代に入ると一般庶民に親しまれるように。
大阪では米沢彦八、京都では露の五郎兵衛、江戸では鹿野武左衛門が活躍し、有料で噺を聞かせる”寄席”が誕生。
とりあえず、「落語は江戸時代から本格的に始まった」と理解しておこう。
その2:落語の”基礎”を知っておく。
さて、次は「落語の基本」をご説明しよう。
毎週日曜日の夕方頃に放送される『笑点』を思い出してもらいたい。
出演しているのは有名な落語家ばかり。
複数人が同時に舞台に上がっているものの、扇子と手拭いを持った落語家が座布団の上に座って噺をするスタイルは本場と相違ない。
先ほど商売道具は、口と手と体だけと述べた。
しかし、落語家は“扇子”と”手拭い”を小道具として使う場合が多い。
例えば、蕎麦をズズズズッとすする描写。
まるでその場で食べているかのような、リアリティー溢れる仕草で表現する。
そのほか、人に物を渡す、受け取る、酒を飲んで酔っ払う……など、一人で何役もこなす落語家のズバ抜けた表現力や演技力を観るのも、楽しみ方のひとつだ。
また、注目すべきは落語家の言葉使い。
男性なら男性らしく、女性なら女性らしく、言葉の色合いを巧みに操る。
江戸落語の場合は、通称・べらんめえ口調と呼ばれる”江戸弁”。
登場人物によっては、田舎言葉になったり、職人・商人言葉になったり、昔ながらの言葉遣いを目の当たりにできる。
落語家の早口と方便に聞き取るのが難しいかもしれないが、慣れ親しめば問題ないはずだ。
その3:寄席選びは”階級”を知ってから。
芸能の世界は厳しい……。
そんなイメージを抱く人も多いだろうが、落語の世界も同じだ。
落語家には、”前座見習い”、”前座”、”二ツ目”、”真打ち”という階級がある。
まずは師匠のもとに入門し、弟子として前座見習いからスタート。
初めて寄席に上がれるのは、前座になってから。
その後、真打ちを目指して日々修行を重ねる。
“羽織”や”袴”を身につけられるのは二ツ目になり、真打ちとなれるまでの期間は10年以上。
厳しい日々を乗り越え、真打ちになって初めて、寄席の一番最後=トリに出演する資格を得られ、落語家として認められるわけだ。
そのため、寄席を選ぶとき、まずは「どんな階級の落語家が出演するだろう?」と確認しておこう。
ちなみに、落語家が身につける羽織には特別な意味がある。
話の途中、落語家が羽織を脱ぐのだが、これは”マクラから本題に入る合図”。
もっと細かく説明すれば、“町人・職人・小商人といった庶民が羽織を着ない”ことが理由として挙げられる。
多くの落語家がマクラで世間話をして客の気をひくわけだが、「いつ羽織を脱ぐのだろう?」とワクワクしながら聞いていると面白いと思う。
その4:落語への”関心”を高めておく。
本場の落語にすんなりと入り込むために……
出来れば以下に挙げる2つの方法で、イメージを膨らませておきたい。
1.江戸の歴史に触れておく。
東京都墨田区にある『江戸東京博物館』。
江戸と東京の歴史・文化を伝えるため、様々な模型や貴重資料を展示している。
落語の噺に登場するのは、多くが江戸時代に生きた商人や町人など。
そのため、少しでも江戸の空気感に触れておくのは、落語の噺を理解することにも繋がる。
ちなみに、時折、館内で落語が披露されることもあるので要チェックだ。
電話:03-3626-9974
観覧料:大人600円
開館時間:9:30~17:30 (土曜日は9:30~19:30)
休館日:毎週月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌日)、年末年始
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
2.落語に慣れ親しんでおく。
理解するには言葉よりも、映像で見るのが一番手っ取り早い。
そこでオススメなのが、TVアニメ『昭和元禄落語心中』。
雲田はるこ原作のコミックがアニメ化され、若者の落語ブームの火付け役となっている。作中には本場・落語家顔負けの落語が披露されており、「落語ってこんなに面白いのか!」と前のめりになって鑑賞できるはずだ。様々な方面で活躍する声優・山寺宏一の熱のこもった落語は必聴。江戸の小粋な人間模様が描かれ、大人こそ楽しめる作品となっている。
■昭和元禄落語心中
http://rakugo-shinju-anime.jp/
※2016年1月~3月、全13話が放送。第2期を制作中。
おわりに
落語……と聞いて、身構えてしまう人が多い。
自分には理解できない、興味がない、良さが分からない。
見てもいないのに、聞いてもいないのに、いわば、食わず嫌い状態の人が多いように思える。
しかし、冒頭でも述べた通り、本来、落語とは庶民の嗜みのひとつ。
何も考えず、気軽に足を踏み入れられる世界なのだ。
そして、落語に親しむことは、ビジネス面で大きなメリットがある。
その詳細については、後日語ることとしよう。