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心に刀を宿す現代人に説く。 大和魂が綴られた『武士道』にみるビジネスマンの掟とは?

武士道。
この言葉をみて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。
腰に刀を携え、凛とした佇まいで、悪者をバタバタと切り捨てる。
そんな、正義の味方、真の漢の姿を描くかもしれないが少々誤りがある

武士道とは、すなわち、日本人の心。
文化、歴史、道徳、思想などをまとめたと捉えて相違はない。
この概念・定義を1冊にまとめたのが『武士道』。
そして、それを手がけたのが、日本が誇る歴史的人物『新渡戸稲造』である。

世界的なベストセラーである『武士道』。
そこに記されている日本人の心は、現代を生きる私達にも通じるものが多い。
道徳を重んじ、信じる我道を進み、真の通ったブレない人生を歩む。
日本人として恥ずかしくない生き方とはなにか。
今回は、そんな武士道と新渡戸稲造を知るきっかけとなれば幸いである。

日本を世界に広めた、新渡戸稲造とは?

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新渡戸稲造(1862〜1933)。
農学者、教育学者、倫理哲学者、そして国際連盟事務次長。
様々な肩書きを持つ、日本が誇る歴史的人物の一人である。
旧5,000円札の顔を飾っていたといえば、容易に思い出せるだろう。

日本が日清戦争で勝利を収めた頃。
明治33年(1900)に出版されたのが『武士道』である。
世界が日本という島国について、全くの無知だった時代。
「日本国とは?」「日本人とは?」という問いかけに答えたのが『武士道』。
そのため、初版は全て英語。
タイトルも『Bushido ー the soul of Japan』で、ターゲットを海外に向けている。

明治41年(1908)には、日本でも翻訳本が出版。
以降、世界30カ国語以上に翻訳され、今もなお新たな翻訳が生まれ続けている。
発行から110年以上。
まさしく、『武士道』は世界的なベストセラーなのだ。

武士道は、日本人の心

“the soul of Japan”

英語版のタイトルにある通り、『武士道』は日本の心を述べた本。
新渡戸稲造は、武士道を武士が守る掟として下記のように説いている。

武士道は、このように、武士が守るように要求され、また教えられた道徳の掟である。
それは文字に書かれた掟ではない。
せいぜい口伝によって受け継がれたものだったり、有名な武士や学者が書いたいくつかの格言によって成り立っているものである。
(中略)
数十年、数百年におよぶ武士たちの生き方から自然に発達してきたものである。

出典:山本博文(2012)『現代語訳 武士道』ちくま新書

もともと、武士道は定義があやふやだった。
新渡戸稲造は、世界各国に分かりやすく伝えるためにまとめたというわけだ。
そして、武士道は武士だけに掟に留まらず、日本の魂、すなわち、”大和魂”として庶民にも広まったとしている。

果たして、『武士道』にはどのような大和魂が記されているのか。
全ての内容を語るには膨大すぎるので、今回は”武士道の徳目”を抽出して解説しよう。

武士道の徳目、9カ条

武士道は、神道、仏教、儒教を源泉としている。
それぞれの概念に徳目があるように、新渡戸稲造は武士道にも徳目を設けた。

< 義 >
卑怯な行動や不正な行為を憎む正義感がある

< 勇 >
ただ勇敢なだけでなく、正義のためにふるう勇気がある

< 仁 >
弱者、敗者に対する思いやりがある

< 礼 >
他人の気持ちを思いやり、社会的地位の相応の経緯を払う

< 信 >
口に出したことは命を懸けて守る心構えがある

< 忠 >
目上に対する服従と忠実、しかし追従するわけではない

< 智 >
単なる知識ではない叡智をもつ

< 名誉 >
武士の身分に伴う義務と特権を重んじる

< 克己 >
みやみに心の底にある思いや感情をあらわにしない

引用:Discover Japan 2月号(2013)枻出版社

簡潔に述べれば、上記の徳目が大和魂の素といえる。
もともとは武士が守る掟として根付いていいたが、腰に携えた刀を”心”に宿す現代の日本人にとっても、見逃せない概念ではないだろうか。

武士道を胸に現代を生きる

例えば、< 礼 >について。
他人の気持ちを思いやり、社会的地位に相応の敬意を払う。
いくら自分に能力があろうとも、調子にのって天狗にならず、身分をわきまえて、相手の敬意を忘れずに接する。
ビジネスにおいて基本的なスタンスだし、それが自然と出来ている人の周りには味方が多く集まるだろう。

また、< 忠 >について。
主君に対する服従と忠実に関しては、現代においては度が過ぎる気もする。
しかし、常に”信頼”を重んじる姿勢は今も昔もこれからも変わらないだろう。
そして、大事なのは決して追従しない。
目上の人にこびることなく、自分の足で生きていく姿勢が大事ということ。
それはつまり、会社に依存するのではなく、個人の力で生き抜く力が必要な未来の日本において必須の徳目といえる。

武士道の徳目。
果たして、あなたの目にはどのように写っただろうか。
きっと、胸に響く徳目は、自身が抱えている劣等感や問題点に通じるはず。
じっくりと、自分の心と対話して考えてみてほしい。

おわりに

全17章からなる『武士道』。
新渡戸稲造はその最後の章で、“武士道の未来”について述べている。

武士道は、独立した倫理の掟としては消えるかもしれない。
しかし、その力は、この地上から滅び去ることはないだろう。

引用:Discover Japan 2月号(2013)枻出版社

新渡戸稲造が予言した通り、現代の日本で武士道に対する関心が高まりつつあるようだ。
あらゆる選択の自由を手にし、それによって路頭に迷ってしまう私達が、なんらかの道標や指針を欲している証とも言えなくはない。

自分とは誰なのか。どう生きればいいのか。
その糸口を『武士道』に求めてみるのも、ひとつの手かもしれない。

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