理想を叶えるスパイスとは?信念をもって生きる大切さを映画「ザ・エージェント」に学ぶ
信念をもって生きるのは、そう簡単ではない。
たとえば、「なぜ働くのか?」と聞かれたら、ほとんどの人が「生活のため」「家族のため」と答えるだろう。
誰しも少なからず理想はあるが、現実は違うと割り切って毎日を過ごしている。
諦めているわけではないが、できるならリスクは避けたいというのが本音だ。
もし信念に従い理想の生き方ができるなら、それは本当に幸せなことなのだろうか。
そこで今回は映画「ザ・エージェント」から、理想の生き方を学んでみたいと思う。
自分の生き方に疑問を感じる瞬間に
1996年に公開されたトム・クルーズ主演の「ザ・エージェント」。プロスポーツの選手を支えるエージェント(マネージャー)業界のビジネスを描いたヒューマンドラマである。
優秀な選手を見つけてオファーし、年俸や待遇といった条件を移籍先と交渉するのだが、メンタルやブランクで選手がブレた場合にケアすることもエージェントの役割になる。
つまり、選手のスポーツライフをトータル的にマネジメントするのがエージェントの仕事。エージェントの力量で選手の人生が変わってしまうこともある。
選手側から見ても、エージェントは自分の人生を左右する存在であるため、高額な報酬を払ってでも腕利きのエージェントを求めるわけだ。
そんなエージェントを熱演したのがトム・クルーズ演じるジェリー。大手スポーツ代理店に勤める腕利きのエージェントで、数々のプロスポーツ選手を好条件で移籍させてきた。
ある日、一人の選手が4度目の脳震とうを起こす。普通なら休養しなければならないが、ジェリーはビジネスを優先して選手に休養させようとしなかった。
それを知った選手の家族は大激怒。ジェリーにクレームを言い、「悪魔」とまで非難されてしまう。
ふと我に返ったジェリーは、「このままでいいのだろうか」と自問自答する。
利益を優先する今までの“やり方”に疑問を抱き、良心に目覚めたジェリーは徹夜で仕上げた企画書を上司に提出する。
企画書の内容は、「選手を大切にする=信頼関係を築くために一人のエージェントが抱える選手の数を制限しよう」というものだった。
具体的には、
・選手からもらう報酬を下げる
・利益よりも選手の人生を1番に考える
・選手一人一人に見合った生き方を提案してあげる
・選手もエージェントも互いに人間らしい生き方をする
一人のエージェントが大勢の選手を管理していてはサポートが疎かになると考えたジェリー。その結果、選手の人生を狂わせてしまうと悟ったのだ。しかし、会社としては選手が多いほど利益が生まれる。
理想的な提案ではあるが、会社にとっては利益を縮小しかねない問題。当然ながら企画は却下され、ジェリーは会社を辞めてフリーのエージェントになることを決意する。
信念に立ちはだかる大きな壁
フリーになったジェリー。掲げた理想を現実にしようと信念をもってビジネスに奮闘する。しかし、現実はあまくはなかった。
これまでは会社のブランドで仕事をしてきたジェリーだが、フリーになった途端に状況は一変。元同僚やライバルたちに選手を奪われたり優秀な選手からは見向きもされなかったり失敗の連続。
そんな矢先、アメフト選手のロッドから「好条件で入団できるチームを探してほしい」と連絡が入る。どちらかと言えば“落ち目”でピークを過ぎかけている選手。
条件をのんでくれるチームはいないと思いつつも、ジェリーは依頼を引き受けた。そして、ジェリーはロッドに対し、「ベストパートナーになりたい」と信念や理想を掲げる。
ところがロッドの反応は意外にも現実的だった。“Show me the money”「理想はいいから俺のために良い契約をとってこい、金を稼いでこい!」と強い言葉を浴びせる。
ロッドは選手としての寿命が10年ほど。その間に家族を養うための生活費を稼いで蓄えておく必要があったのだ。
理想よりもお金という現実がロッドにとって大切だった。
体はボロボロになってもいい、とにかく稼ぎたいと主張するロッド。一方、お金よりも選手一人一人に見合った生き方を提案したい、それがジェリーの信念だった。
葛藤しながらもロッドの移籍先を探すジェリーだったが、多忙な日々とストレスに追われ妻との関係がギクシャクして別居する。
なんのために働いているんだろう・・・、自らが抱いた信念に苦しめられ心が折れていた。理想だけだは食っていけない、そう現実を突きつけられた瞬間であった。
ビジネスにおける理想とは?
悪戦苦闘しながらもジェリーは理想と現実の狭間で一つの答えを見つける。自分の理想と相手の求める理想がマッチしなければ信頼関係は築けない、と。
それはロッドに対してだけでなく、妻に対しても同じ。独りよがりでは意味がないし、よかれと思ってやっても反対に周囲を苦しめることになると気づいた。
そしてジェリーは、次のようなプランを立ててビジネスを見直した。
●どんな方法なら相手が求める理想的な結果を残せるのか
●相手の理想を優先しつつ、さらに良い結果を残すための提案をする
●相手が求める理想だとしても不利益な結果を引き起こす場合は軌道修正する
つまり、相手の理想を叶えれば自分の理想も満たされる、それがジェリーの導き出した答え。
選手の人生を1番に考えるなら、それに合わせることがベストという考え方だった。
そのなかで、できる限りのサポートやフォローをして互いの利益になるような状況を生み出すのが自分の役割であると気づいたのだ。
これはジェリーに限らず、ビジネスマンにとっても同じことが言える。利益ばかり優先すると金儲けになってしまい、相手が求めているものを疎かにすると信頼関係は築けない。
ジェリーはロッドの理想を受け入れつつ、ときには自分のアドバイスをぶつけながら結果を残していく。ジェリーの期待に応えるようにロッドも活躍し、理想が形になっていった。
ビジネスで一つの成功をおさめたジェリーだったが、解決していない問題があった。それは、妻の問題。ビジネスは上手くいったけど、どこか心が晴れないジェリー。
愛もお金も大切
ロッドの成功を見届けると直ぐさまジェリーは別居中の妻のところへ向かい、2度目のプロポーズをする。
“You complete me”「君がいなければ僕は完成しない」と。
そして妻のドロシーは、“You had me at hello”「あなたと出会ったときから、あなたはあなただった」と答え、物語はハッピーエンドを迎える。
ビジネスも家庭も本当に信頼しあえる人間関係を築きたいと思うなら、「愛」をもって向き合うことが大切というわけだ。それが理想を叶えるスパイスになることを「ザ・エージェント」を観れば学べる。
信念を貫くのは容易ではない。しかし、ジェリーのように考え方を少し見直せば自分の理想にたどり着くための方法に気づけることもある。
信念とは貫くものではなく変化させながら育てていくものなのかもしれない。
さて、あなたは信念をもって生きているだろうか。
仕事や人間関係でブレたときには、ぜひ「ザ・エージェント」を観てほしい。本当に大切なものは何か、考え方や生き方を変えるヒントが見つかるかもしれない。
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