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【安藤俊介さんインタビュー】“粋”とは、自分の人生に集中すること。アンガーマネジメント で、怒りと上手く付き合う

厳しい父親との関係に悩んでいた

「なぜ、人は怒るんだろう」ということを調べていて、日本アンガーマネジメント協会さんを知りました。
「怒りはコントロールできる」とあって『なるほど』と思ったのですが、そもそも安藤俊介さんはアンガーマネジメントに出逢う前はどんなことに怒り、苦悩されていたのですか?

僕自身の怒りの中心は父親との関係でした。私の父親は公務員なんですが、しつけに厳しかったんです。とにかく私のあらゆることに干渉したい、自分の指示する通りに生きて行かないとすごく怒るタイプの人でした。
私は自由にしたい、好きなことを好きにやりたいと思うタイプだったので、そこでの衝突はずっとありました。それは私が成人して独立しても続きました。勤め先も公務員かテレビコマーシャルをやっているような企業しか認めようしませんでした。私が一番、最初に入社したのは名も知れないベンチャーでしたから大反対でした。「つまらない会社だ」みたいなことをすごく言われました。私はやりがいを持って働いていたのにです。

確かに、子どもをコントロールしたい、という父親はいますね。

いま、考えると父は、自分が嫌な目にあってきたことを子どもにも味合わせたくない、という想いが強かったんだと思います。子どものことを想うがあまり、厳しくなっていたんです。

お父様にすれば愛情だったわけですね。

そうですね。実は、私のアンガーマネジメントの講座を受講される方には、親との関係で悩んでいる人はすごく多いんです。「親のいうことは聞くべきだ」という思い込みがすごく強い。
でも、自分の人生は自分の人生。自分で自分の人生の責任は取らないといけません。だから、いつまでも親の呪縛にいる、親の価値観に縛られて生きて行くというのは、それはそれで問題があると思いますね。

安藤さんがアンガーマネジメントに出逢ったのは、2003年のことなんですね。

アメリカに駐在していたとき、『アンガーマネジメント』(邦題『N.Y式ハッピー・セラピー』)という映画が公開されていました。大ヒットした映画で、テレビや新聞で「アンガーマネジメント」という言葉があふれていました。アメリカ人の知り合いが「やっているところを知っているよ」と教えてくれて。それで教わったのが最初でした。受けてみたら「ああ、なるほど。これなら私にもできるかな」と思いました。

そこから日本でアンガーマネジメントを広めようと思われたわけですね。

ビジネスになるとは考えていませんでした。よくわからないけど、『一生かけてこれをやっていこう』と思ったんです。そこから自分も教える側になりたいと思って、ナショナルアンガーマネジメント協会のトレーニングプロフェッショナルになり、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会を立ち上げました。

「怒り」をコントロールする方法とは?

アンガーマネジメントのどこが良かったのですか?

体系的だということです。
「運が悪いことがあっても怒らないで感謝しよう」とか「雨が降っていることを気にしないでいましょう」と言われても、なんだかふわっとしているじゃないですか。それがロジカルに「こうしたらこうなる。こうなったらこうしたほうがいい」と明確だったんです。

自己啓発的なものではないわけですね。

誤解されている方も多いのですが、 違うものです。

怒りの「メリット」はなんでしょうか?

メリットはモチベーションになることですね。「怒り」は必要なものです。自分を守ることを気づかせてくれるサイン、感情なんです。

「怒り」は捨ててはいけない感情なんでしょうか?

捨ててはいけないというより、捨てられないものです。必要があって備わっている感情だから、捨てる必要は全くありません。

では、怒りの「デメリット」とは?

大きなデメリットのひとつは 人間関係を壊すことですね。人との関係を壊してしまうし、 ときには自分も壊してしまうかもしれない。
怒りを他人に向けたり、自分に向けることで、自分を鬱屈させてしまう。それは自分で自分を攻撃していることにつながります。

多くの人は「怒り」で苦しんでいます。なぜなんでしょう。

「怒り」というのは練習することでコントロールできます。
皆さんは単純に練習不足なんです。

野球や料理で毎日、同じ失敗をしていたら、よほど物覚えが悪いか、非効率なのか、不器用じゃないですか。同じように毎日、同じように怒っているのだとすれば、それも同じように、よほど物覚えが悪いか、非効率なのか、不器用なんです。野球や料理が習うことで上達するように、実は「怒り」も習うことでコントロールができるんです。

その、コントロールの方法をぜひ、教えてください。

皆さんに「怒ったことを覚えていますか?」と聞くと覚えていなことが多いんです。
よく怒るけれど、忘れてしまっている。なので、怒ったことを記録するのがひとつの方法です。プロの野球選手などは、練習ノートを作って、自分の問題点などを記録しています。その問題点を解決すればいいとわかっているからです。それと同じことです。まず、怒ったことを記録してください。

記録するポイントはどのようなことなのでしょう?

「何を怒っている」ということを記録します。そうすれば傾向がわかります。例えば、「電車に乗っていて満員で怒っていることが多い」とわかったら、電車に乗るのを辞めればいいんです。それか早くに起きて空いている時間に乗ればいい。今の極端な話ですが、パターンがわかれば、その原因に向き合えばいいんです。

上司に「怒り」を感じる場合はどうすればよいのでしょう?

それは付き合い方を変えるしかありません。「雨が降るのに怒りを感じる」と言われても雨が降らないようにはできません。だったら雨が降っても楽しくなるような傘を買うとか、レインコートを買うとか。嫌なものと付き合う方法もあります。

なんとなくわかってきました。

あと、見なければいい、というのもあります。テレビを見て「怒り」を感じるなら見ないようにする。

でも、見てしまうんですよね。

実は、自分の怒りを解決できないから、攻撃できる対象を自ら探しているです。
皆さん、「怒りたくない」と言うのですが、僕は逆だと思っていて、皆さん、怒る対象を探しているんです。仕事で悩んで自殺した事件があれば、「自殺するんだったら、そんな会社は辞めたほうがいい」と怒り、アイドルが仕事で悩んで辞めると言うと「仕事をほったらかしにして無責任だ」と怒っています。どっちなんだと。仕事を辞めなくても怒るし、辞めても怒る。

ほんとうですね(笑)。

だから、なんでもいいんですよ。ただ、怒りたいだけなんです。それは自身の身の回りの問題を解決できていないからです。要するに自分の人生に集中できていないから、他人が気になるんです。
自分の人生に集中したら、そんなことは気にならないですよ。

安藤さんは怒ることはありますか?

電車から降りようとすると、出口で動かない人がいたりするじゃないですか。『一度、降りろよ』とイラッとしますね(笑)。もちろん、僕も怒ることはたくさんありますよ 。政治や世の中に怒ることはあります。

怒ってもいいわけですね。

「怒り」はあってもぜんぜんいいです。先ほど、付き合い方を変えればいい、見なければいい、という話をしましたが、逆に徹底的に関わる、ということもひとつの答えです。怒りを感じるなら抗議することも大切です。ただ、怒るだけでなく、怒りを持って社会をよくするための行動のモチベーションにする、ということです。それは健全な「怒り」だと言えます。

自分の人生の責任は自分にある

逆に「怒る」ときはどうすればいいのでしょうか?

「怒る」には2つの要素があります。
ひとつが「リクエスト」。もうひとつが「気持ち」です。

例えば、門限を破った子どもにお母さんがどう怒るかと言うと、「あなた、私がどんだけ心配したかわかる!」と怒ります。ここには「心配した」という気持ちしかありません。リクエストはありません。しいて言えば、「私の気持ちをわかれ」というのがリクエストです。
でも、「気持ちをわかれ」というのはあいまいで理解できません。怒るときは「リクエスト」と「気持ち」が必要です。だから正しく怒るなら「門限を守りなさい。心配だから」です。「門限を守る」というリクエストがあると次からは「守ろう」となります。世の中の人はリクエストなしで怒っている人がすごく多いんです。
それでは何も得ることはできません。結局、怒って自分が満足するのは、次からどうして欲しいということを理解してもらうことなんです。
「門限を守って欲しい」というリクエストをすることで、それを守るようになると怒りはなくなります。けれど、リクエストがないといつまでも改善されないから、常に怒ることになるんです。

すごくわかります。

人は「察しろよ」ではわかりません。怒るのが上手な人は自分のリクエストを通していく人です。

アンガーマネジメントは大切ですね。

子どもにもアンガーマネジメントを教えています。怒りの感情で自分の選択肢を減らして いることがあるんですね。ひねくれて嫌になる、というがあるじゃないですか。先生や親に言われて腹が立って、絵やスポーツなどを辞めちゃうとか。そこで怒らないでもうひと頑張りすれば、違う人生に進めるかもしれない。自分の選択肢を減らすことはもったいないですよね。

大人も同じですね。

独立しようと思ったのに反対されて「怒って」やめちゃうとか。それでは自分の可能性を閉じるだけです。

安藤さんにとって“粋”とは?

自分の人生に集中することではないでしょうか。
要するに他人の価値観や他人の評価を気にせず、自分の人生に集中できている人は“粋”だと思いますね。

そこに怒りをコントロールすることが大切となりますね。

怒りのはけ口 を求めるのではなく、腹の立つことがあっても、それは自分のなかで解決し、消化して行く、ということが大切だと思います。

でも、「集中」することが一番、難しいように思います。

自分の人生は総て、責任は自分にある、ということを意識することが大切です。
私たちは総ての感情を自分では選べないんです。誰も自分を怒らせることも、悲しませることも、喜ばせることはできません。
最終的にはどの感情を選ぶかは、自分で決めないといけません。その責任を自分で持つことが重要です。
そうすれば他のことは気にならなくなります。自分が正しいと信じていることに集中することが大事ですね。

自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする
はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック
安藤 俊介

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安藤俊介(あんどうしゅんすけ)
1971年、群馬県の生まれ。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会・代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。
2003年に渡米してアンガーマネジメントを学び、日本に導入し、第一人者となる。
ナショナルアンガーマネジメント協会に在籍する1500名以上のアンガーマネジメントファシリテーターのうち、15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアメリカ人以外では唯一として登録されている。
『叱り方の教科書』(総合科学出版)
『どんな怒りも6秒でなくなる』(リベラル社)
『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『アンガーマネジメント×怒らない体操』(集英社)
『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)
など多数。
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