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人の悩みは時代を超える?…今を生きるために知っておきたい論語

あなたは、どんな立場で仕事をしているだろう。
上司、部下、同僚、取引先…避けては通れない人間関係は、良好だろうか?

失望したり、戸惑ったり、面倒だな…と思って居場所を変えても、人間関係はついて回る。
その悩みは、いつの時代も本質は変わらない。

歴史を紐解けば先人たちも、人の在り方、リーダーシップ、マネジメントなど、同じように悩む中、数々の思想に導かれながら、ことを成し遂げていったであろう。
中でも、およそ2500年もの間、世界中の人々に読み継がれてきた思想書が「論語」である。
日本においても多くの実業家が論語を取り入れ、経済発展の大きな原動力となったといわれる。
今回は、ビジネスの経典ともいわれる「論語」に触れてみよう。

論語とは?

論語は、「孔子」の言行を、孔子の死後100年ほど経った後に、弟子たちにより編集された書物。
500句程の言葉があり、全20編で構成され、孔子の言葉だけでなく、弟子との身近な人間関係や心情などのやりとりが、分かりやすく書かれている。

孔子の教えを元に発展させた儒学「儒教」は、東アジアの文化に大きな影響をもたらした。
論語は、日本においては、奈良時代に知識人たちの必読書となる。
宗教的な教えなどではなく、人としてごく当たり前のことが簡潔な言葉で記され、江戸時代の寺子屋教育に至るまで、日本の道徳教育に広く浸透した。
「仁」「儀」「礼」「信」「勇」…など、孔子が残した【徳】の思想は、日本人の無意識に深く刻まれている。

人間味あふれる孔子

紀元前552年、春秋時代、中国東部の魯(ろ)の国に生まれる。
孔子の本名は、氏は「孔」、名は「丘」、字は「仲尼(ちゅうじ)」。
孔子とは、氏名の「孔」と、先生という意味の「子」を合わせた尊称である。

孔子は、15歳で学問を志すも家が貧しく、色々な仕事で生活費を稼ぎながら、有識者の元へ通うなどして勉学に励んでいた。
19歳で結婚し、翌年に長男をもうけ、やがて30歳頃に私塾を開く。
孔子の活躍した周王朝の春秋時代末期は、下剋上や反乱が蔓延し、荒れすさんだ時代であった。
孔子は、秩序を取り戻すべく「乱世に、人はいかに生きるべきか」を問い続けていった。

その後、役人なども経験し改革を試みるも、反対勢力に敗れ、故郷を離れざるを得なくなる。
十数年間にわたり諸国を遍歴し、自分の政策を説いて回ったが、どの国も魯の国と同様、権力者にとっては認めるわけにはいかず、不遇に終わる。
その後69歳で故郷に戻り、74歳で亡くなるまで、弟子たちの教育に専念し、今日の論語がある。
弟子はおよそ3000人。そのうち学問の基礎を身につけたのが70余名とされる。

孔子は、釈迦、ソクラテス、キリストと並ぶ世界の4大聖人と称されるが、決して聖人君子ではなかったという。
お酒や音楽が好きで、子孫を残すが離婚を経験した説もあるなど、人間味に溢れる。
自らを権威化することもなかった。
故に孔子学団は、自由闊達な議論ができる場であったため、深い学びや気づきを得られたとされる。

現代に息づく論語8選

論語は、弟子が質問や導きを求めたとき、孔子がおっしゃったという意味の、「子、曰わく――」で始まる言葉が多い。
ビジネスに役立つ、いくつかの言葉を紹介しよう。

1.子曰く、譬(たと)えば山を為(つく)るが如きに、未だ一簣(いっき)にして止むは、吾が止むなり。譬えば地を平らかにするが如きに、一簣を覆えして進むと雖(いえど)も、吾が往くなり。

山を作ろうとする時に、あと一杯の土を盛ればで完成するとしても、そこで止めてしまえば、それは、自ら止めたことになる。
土地を平らにしようとして、一杯の土を入れただけであっても、それだけ前進したことになる。
物事は、やり続けて止めなければ、失敗したことにはならない。
結局、止めるのも進めるのも、自分次第である。

2.知らざるを知らずと為せ。是れ知るなり。

知らないことは知らないと自覚する。
これが本当の「知る」ということである。

知ったふりや、あやふやな情報では、目標を実現する可能性は低い。
物知りや知識人といわれる人、専門ジャンルを持っている人ほど、知っていることではなく、“何が分からないか”をわきまえることが必要である。

3.後生(こうせい)畏(おそ)るべし。

後から生まれてくる人や、学ぶ人を、侮ってはいけない。
若いということは無限の可能性を秘めている。
自分たちには及ばないなどと、どうして言えるだろう。
部下や後輩にダメな部分があるといって見下してはいけない。
原石だと思って個性や意思を尊重し、育てていく気持ちが大事。

それは育てられる側の喜びでもあり、結果、組織の活性化となる。

4.過ちて改めざる、これ過ちという。

誰でも過ちを犯す。だが、それに気づきながらも改めようとしないことこそ、本当の過ちである。
過ちは人の常であり、向上の元でもある。
自分の行いによって学びながら、自分を磨き続ければよい。

5.故きを温ねて新しきを知れば、以て師となるべし。

古くからの伝えを大切にし、それを現在に当てはめて新たな知恵を見出せるなら、人を導く師になることができる。
単に知識を詰め込むだけでは、真の指導者にはなれない。
基礎を固めて習熟し、新しい事を知ることができれば、より奥行きのある知識を得られるものである。

6.人にして信なくんばその可なるを知らず。

いくら才能があっても、信用がなければ何にもならない。
「信」という字は、「人」が「言」と書く。
自分の発言の1つ1つを大切にすることだ。
平気で嘘をついたり、約束事を守らなければ、人として使い道はない。
信用を得るための基本は、「言行一致」である。

7.其の身正しければ、令(れい)せざれども行わる。其の身正しからざれば、令すと雖(いえど)も従わず。

上に立つ者(自分自身)の行いが正しければ、命令などしなくても人は行動する。
自分自身が正しくなければ、いくら命令しても、人は従わない。
金銭や圧力だけで人は動かない。たとえ動いたとしてもその場しのぎだろう。
良い時ではなく、危機が訪れた時こそ、普段が問われる。

8.徳は孤ならず、必ず隣あり。

思いやりや信用など、徳の高い人は、決して孤立することは無い。
必ず、よき理解者や、協力者があらわれるものだ。
一時的に苦しい状況が続いても、やるべきことに専念すればよい。

おわりに

人との関わり方は、生き方そのものでもある。
あらゆる事柄は、人が人と、どんな志しで、どう関わったかが、行く末を決めると言っても過言ではないだろう。
今、あなたが悩む人間関係は、あなたがはじめてではない。
先人達の多くが、同じような悩みを抱え、その多くが論語などから学び、自ら、課題解決のヒントを得た。

古くから日本人にも根付いている論語のエッセンスは、あなたの中にもある筈だ。
何かに迷ったり躓いた時、1人で悩んだり、誰かに相談するだけでなく、格言や名言に耳を傾けてみてはどうだろうか。

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