これからの時代に差をつける必須スキル!…“あえて”紙を選ぶ。その重要性と基礎知識
人類における「紙」との関係性は長く、紙が使われだしたのは紀元前2世紀だといわれている。
約2,200年もの間、紙は人と人とのコミニケーションツールとして長きにわたり使用され、人類の知を支えてきた。
そんな当たり前のツールとして使われてきた紙だが、いまではペーパーレス企業も増え、ツールとしての存在価値はかつてほど高くない。
実際、数年前と比較し「紙」に触れる機会が減っている人も多いのではないだろうか?
たとえばタブレットでのプレゼン、電子書籍での読書などだ。
電車のなかで手に持つものは、本からスマートフォンに代わった。
では、いずれ紙はなくなるのだろうか?
いや、そうではないだろう。
近くにある紙を実際、触れてみてほしい。
色、厚さ、肌触りなど、「紙」には文字だけでは、伝えられない要素を含んでいないだろうか。
手帳市場はいまだ不況知らずといわれていて、モレスキンノートをはじめとする高級文具が、ブームといっていいほどの売れ行きを見せている。
紙についていえるのは、「日用品」としての価値はこれからも下がり、それにつれて「趣向性」が上がっていくということである。
自分で選んだノートに記録を残し、コレクションとして紙の書籍を持つ。
紙をあつかう上で、それぞれに哲学が問われるようになるのだ。
「あえて」紙を使う時代に備えて、紙についての基本を知っておく必要があるのだ。
すべての用途に耐える完璧な紙はない
もっとも馴染みがある用紙は「上質紙」だろう。
いわゆるコピー用紙だ。
コピー用紙として通常使われているのは、光沢がない「上質紙」と、雑誌等でも使用される「コート紙」だ。
上質紙はコート紙に比べ、インクが若干滲んだり、写真の発色が悪かったりする。
それでも一般的に上質紙が用いられるのは、コーティングがされていない分、軽く、めくりやすいからだ。
たとえば文学賞の応募原稿などでも、読みやすさから上質紙が指定されたりする。
上質紙にもこまごまとした種類があるが、古紙パルプの配合されている再生上質紙で見るのも面白い。
古紙パルプの比率が上がるほどグレー掛かっていくが、ちょうどいい配合率であれば、「味」のある用紙になる。
上質紙の見本帳でそれぞれのサンプルが見られるので比べてみるといいだろう。
小説やビジネス本など、文字ものの書籍で使われる紙は「クリーム上質」といわれるものだ。
若干くすんだ白にも見えるクリーム色だが、文字を見る上でもっとも疲れない色である。
クリーム上質の文字を読んだ直後に上質紙の文字を読むと、若干チカチカした感じを受けるだろう。
モレスキンやツバメノートなどには、クリーム上質が使用されている。
クリーム上質の弱点としては、カラーが挙げられる。
クリーム色の地に色をのせてもくすんでしまうのだ。
同じ用紙でも厚さ変われば別物に
紙は厚さでも全く表情が変わる。
たとえば、聖書や辞書で使われる紙は極薄で重量も軽い分、視野性はある程度犠牲になってしまう。
光に透かすと紙に繊維のあいだの穴が見えるほどの薄さのため、印刷された文字が裏透けするのだ。
ページの表と裏の文字列を合わせられる印刷であればそれほど気ならないが、ノートとしては使用できない。
小説でいえば、単行本より文庫の方が基本的に2~3段階ほど薄い紙が使用される。
重さを減らすという意図もあるが、開いたときのコシが違ってくる。
文庫本はサイズが小さいため、紙を薄くしてコシをやわらかくしないと開きづらくなってしまうのだ。
書き込むための紙を選ぶときは、使用する文具と相談する必要がある。
たとえば人気の高級ノートであっても、インクとの相性が悪ければ裏透けする。
しかし紙が厚すぎるノートはコシがありすぎて開きがわるくなる。
自分の使用するインクで試し書きをしながら、裏透けやにじみ、乾きの早さを比べ、紙の開きなどを総合的に鑑みることで、いい紙に巡り会えるのだ。
紙に「触れて、遊べる」場所はここだ
紙へのこだわりを持つ人が増えているからだろうか、最近では紙で遊べるスポットも多くなった。
1.【蔵前】カキモリ
たとえば東京・蔵前にある“カキモリ”というカスタムノートを作れる文房具店だ。
60種類の表紙と、30種類の中紙を選ぶことができ、ざらざらした感触の「コミック紙」や、万年筆にあった「フールス紙」なども揃っている。
営業時間:(平日)12時〜19時
(土日祝)11時〜19時
月曜定休(祝祭日の場合はopen)
URL:http://www.kakimori.com/
2.【神保町】竹尾・見本帖本店
また純粋に「紙」の材質や種類を楽しみたいなら、東京・神保町の“竹尾・見本帖本店”に訪れてみてほしい。
竹尾の常備在庫を展示しているこの見本帖本店では、書籍用紙からファインペーパーと呼ばれる特殊用紙まで300銘柄、2,700種類の用紙を見ることができる。
おわりに
紙を知るには、まずは触れて、それぞれを見比べることが大切だ。
初めは種類の多さに戸惑うと思うが、見本帖を実際に手にとってみることで、自然と特徴や使い分けがわかってくるものなのだ。