移動をメインの旅に!…芸術と鉄道を同時に満喫する「現美新幹線」
「世界最速の芸術鑑賞」と名付けられた新幹線があるのは、ご存じだろうか?
その名は、「GENBI SHINKANSEN 現美新幹線」。
2016年4月、上越新幹線(越後湯沢~新潟)にデビュー。
「走る美術館」とも言われ、移動しながら現代アートを鑑賞できるユニークなコンセプトだ。
これまでも観光列車なるものは誕生しているが、車両を美術館にしてしまうという発想は前代未聞だ。
どんなユニークな演出があるのかご紹介しよう。
現美新幹線とは?
現美新幹線は、秋田新幹線の車両「E3系」を5億円かけてリフォームしたもの。
もともとの乗車定員を1/3程度に減らし、6両編成からなる「走る美術館」へ改造した。
注目の現代アーティストが、この列車のためにアート作品の展示と空間プロデュースを手掛け、11号車~16号車はすべてアート空間となっている。
11号車は指定席。12・14・15・16号車は自由に回ってアート鑑賞ができる。
ソファシートが設置され、腰かけながらゆっくりアートを鑑賞できるのも粋な計らいだ。
13号車はカフェスペースとキッズルームになっている。
一人、デート、家族とでも楽しめるだろう。
鑑賞できる注目の作家
蜷川実花(写真家・映画監督)
現美新幹線の外装(エクステリア)を担当。
濃紺の列車自体に、新潟県長岡市の花火を大胆にデザイン。
漆黒の夜空のような6両車全体に、花火が浮かび上がる様は圧巻。
2014年から長岡の花火を撮影。それが新幹線の外装になるというのはうれしい偶然だと語る。
蜷川実花:http://www.ninamika.com/
松本 尚(アーティスト)
11号車。指定席の座席自体がアートワーク。
トンネルが多い上越新幹線を生かしたデザイン。照明で工夫しなくともシートに施されたアートによって、トンネルを抜けた時に室内がぱっと華やぐ。
驚きという体験もアートだ。
松本 尚:http://naomatumoto.turukusa.com/
小牟田悠介(アーティスト)
12号車。ミラータイルで壁が鏡となっているアート車両。
車内の広さが倍に感じられるのはもちろん、窓一面に映る自然の背景がまさにアートだ。
そのアートは走り出すことで完成する。
休符となる長いトンネルを抜ける時の楽しみはひときおだ。
paramodel(アートユニット)
13号車。キッズスペース。
新幹線の中にプラレールを敷き、アートと共に遊び場を造形。
カーペットで靴を脱いで遊べるようになっているやさしい空間だ。
もはや子供たちにとって退屈であるはずの車内ではないだろう。
古武家賢太郎(アーティスト)
13号車。カフェスペース。
カウンターの他、テーブルとイスも備えられ、上越の土地の美しさを描いたアートが展示。
こだわりのスイーツやドリンク、アルコールも愉しめる。
古武家賢太郎:http://www.kobuke.com/
石川直樹(写真家)
14号車。迫力あるフォトギャラリーが展開。
新潟を題材に発表した写真集「潟と里山」から抜粋されている。
今後は四季折々、写真を入れ替えることも視野に。
石川直樹:http://www.straightree.com/
荒神明香(アーティスト)
15号車。ガラスのケースに造花の立体アート釣り下げられる形で展示。
そのため新幹線の揺れにより、作品に微妙な揺れや傾きが生じ、さまざまな表情を見せてくれる。
通常の美術館にはない、まさに移動する新幹線だからこそ観られるアートだ。
ブライアン・アルフレッド(アーティスト)
16号車。壁面に5つの大型液晶モニターに映像が映し出される。
唯一の海外アーティストだが、以前から新潟の風景に心打たれ映像アニメーションに。
モニターに映し出される折々の景色は、まるで車窓のようだ。
ブライアン・アルフレッド:http://paintchanger.com/
おわりに
この秋、どこかに出かけたいと考えている人も少なくないだろう。
どこに行って何をするか… ホテルや料理は?……
ならば、旅先ではなく、移動をメインの旅を目論んでみるのはどうだろう?
新幹線が単なる移動手段ではなく、移動そのものが旅のメインとする。
あなたが電車好きで彼女はアートが好き…あなたがアートが好きで彼女は旅行好き…
例えばそんなカップルが同時に楽しめるユニークな旅がここにある。
最もシンプルで愉しい旅は、道中そのものを愉しめることかもしれない。
http://www.jreast.co.jp/genbi/