最強のノスタルジック ここに収まる……Instagramに垣間見る“生ける廃墟”の記録 5選。
廃墟は、生きている。
そんな言葉を、誰かが言っていた覚えがある。
捨てられ、忘れられ、時間が止まっているかのような印象を受ける廃墟だが、移りゆく年月と共に、少しずつ姿形を変えている。
それは、匂いであったり、色合いであったり、空気感であったり。
そこに強いノスタルジックを感じた瞬間、カメラのシャッターを切るのだろう。
今回は、人気画像共有アプリ『Instagram』に投稿された、廃墟の写真をピックアップしてみた。
1:yulily_ruinsさん
廃墟写真には、いくつかパターンがあるように見受けられる。
そのひとつにインテリアが被写体となった写真があげられるのだが、そのなかで最も生活感を感じられるのが”椅子”だと思う。
つい先ほどまで、誰かが座っていたかのような生々しい印象を受けるのだ。
使い古された椅子が、廃墟に”生活”という名の彩りを加える。
yulily_ruinsさんが写真にコメントしている通り、椅子は、廃墟の花なのだ。
2:s.t327さん
この写真を見て、皆さんは何を思い出すだろう。
私が真っ先に浮かんだのは、ホラーゲーム『バイオハザード』だ。
様々なシリーズが販売されているが、最恐とされるのがシリーズ1作目。
古びた洋館を舞台にゾンビやクリーチャーとの戦いが繰り広げられるわけだが、印象深いのは”階段”の描写だ。
ちょうど、s.t327さんが収めたような階段を、ぎし……ぎし……とゆっくり上がっていく。
階段を上った先に何が待っているのか。
恐怖感を駆り立てられるのだ。
“古さ”という名の美しさを収めている廃墟写真だが、なかには、背中がぞわっとするような、ホラー要素の強いものもある。
3:suizuさん
耐震性の問題から、次々と木造建築の校舎が建て替えられている。
使用する側=先生や生徒、親にとっては喜ばしいことだ。
しかし、子ども時代の思い出を壊されるような、どこか切ない気持ちになる人も多いだろう。
廃墟写真の多くが、廃校となった校舎の記録である。
歩けばギシギシと鳴る廊下、所々が剥げたり傷ついている机、ふとした瞬間に感じる木の香り、そんな空気感が1枚の写真に収められている気がしてならない。
suizuさんの写した写真もそう。
「廊下を走るな!」なんて、口うるさい先生の懐かしい声が聞こえてきそうである。
4:naru_kamiさん
ダイヤルを回すタイプの黒電話。
記憶のなかでは、確かお婆ちゃんの家にあった。
誰かに電話をかけるつもりは全くなかったのだが、無駄にダイヤルをジ~ガチャン、ジ~ガチャンと回していたのを今でも覚えている。
あなたが生まれ育った実家には、黒電話はあっただろうか。
そんな、今はなき懐かしいモノが、廃墟写真をめくっていると時々見かけられる。
文明の進歩は恐ろしく早い。
こうして原稿を書くために使っているノートPCも、どこかで廃墟写真として収められる日は、それほど遠くないのかもしれない。
5:_mu.69_さん
植物の生きる力はとても強い。
悲惨な事故で人が近づけなくなった廃墟へ数十年ぶりに足を踏み入れたら、緑の生い茂った森になっていた……なんて話も耳にする。
冒頭で「廃墟は、生きている」と述べたが、廃墟を変化させているのは、そこに息づいている植物たちだ。
_mu.69_さんの収めた写真は、まさにその瞬間を捉えた。
今はまだ小さな蔦かもしれないが、いずれその場を覆い尽くすほどの緑へと成長するのだろう。
古さに美しさを感じる廃墟写真だが、古さに生命を感じられるのも廃墟写真の魅力である。
おわりに
廃墟写真は、大げさにいえばタイムマシンのようなものだ。
古びた家具、校舎、階段、病院、遊園地。それらを目の前にしたとき、数十年前の若かりし頃、青春のひと時を思い出せる。
最近、日々に少し疲れたな……。
そう感じているのなら、廃墟写真に想いを馳せる時間を作ってみてはいかがだろうか。