初心者にもわかる!「野獣」と「紳士」のスポーツ、ラグビー観戦の楽しみ方
2015年、イングランドで開催されたラグビーワールドカップ。
日本代表はその初戦、南アフリカに歴史的な勝利をあげ、世界を震撼させたのは記憶に新しい。
24年ぶりにワールドカップで勝利した相手が世界第3位の強豪だったこともあり、海外では「スポーツ史上最大の番狂わせ」などと報じられた。
日本ではこれまでほとんど注目されることのなかったラグビー。
そんなスポーツがワイドショーを四六時中賑わせ続け、一夜にしてブームに火がついた。
2019年の次回大会は日本開催。
ラグビーはただの一時的なブームで終わることはないだろう。
次の波は沖合で徐々に波高を上げながら、ジワジワとこちらへと迫ってきている。
しかし、ルールを知らない初心者がラグビーを楽しく観戦するのは決して容易ではない。
もちろんなんとなく楽しめるのもスポーツの魅力の一つだが、どんなスポーツでもルールや哲学を知った上で観戦した方が面白いに決まっている。
そこで、今回はラグビーの最低限の知識から哲学までを解説し、ラグビーの本当の魅力を伝える。
これだけ知ればあなたもラグビー通!
ラグビーとは、ちょっと複雑な陣取り合戦である
ラグビーの本質は「陣取りゲーム」である。
各チーム15人が試合時間80分(40分ハーフ)でボールを抱えて走ったり、身体をぶつけたり、パスしたり、時には蹴ったりしながら、敵陣を目指して攻防を繰り返す。
点の取り方は大きく2通り。
5点:ボールから手を離さずに地面に「トライ」
(その直後に与えられるキックによる「コンバージョンゴール」を成功させたら2点追加)
3点:相手に反則された後にキックするか
(「ペナルティーゴール」)、ボールを手に持った状態でキック(「ドロップゴール」)することもできる。
しかし、ラグビーのルールはここから先がとても複雑。
ここでは、ラグビーを楽しむために必要最低限のものだけを紹介する。
スローフォーワード
ラグビーでは、ボールを前に投げてはいけない。
言い換えると、ボールは横または後ろにしか投げられない。
では、どうすれば前に運べるか? それには「ボールを持って運ぶ」か「キック」するしかない。
でも、そのどちらにもまた制約がある。それが次の2つのルール。
ノックオン
ボールを前に落としてはいけない。前からボールが不意に飛んでこようと、相手にタックルされようと、自分の前にだけはボールを落とすと反則。
オフサイド
ボールより前方にいる選手はプレーに関与できない。
ボールを持っている味方選手の前方で相手選手を妨害したり、キックした選手の前方の選手がプレーに参加したり、モールやラックなどの密集地帯で最後尾の相手選手より前方にいてプレーに参加した場合に反則になる。
オブストラクション
ボールを持っていない選手を妨害してはならない。
ノットリリースザボール
相手選手にタックルされたら、ボールを手放さなければならない。もし手放さなかったら反則。
ノットロールアウェイ
逆に、タックルした側の選手は、すぐにボールから離れてプレーの邪魔をしてはならない。
粋なスポーツとはまさにこのこと。3つの精神から紐解く、ラグビーの嗜み方
基本的なルールを理解しても、「なぜラグビーには人気があるのか?」
そう疑問を持つ人も少なくないだろう。
ラグビーの魅力は3つの精神にある。「フェアプレイの精神」と「自己犠牲の精神」と「ノーサイドの精神」だ。
スポーツの世界で「フェアプレイの精神」と聞くと、当たり前といえば当たり前。
しかし、歴史を紐解くとその理由がわかる。
ラグビーは、1823年にイギリスで発祥し、子供をジェントルマンに育てるための手段として様々な教育の場で利用された。
つまり、ラグビーは「紳士のスポーツ」そのものなのだ。
次に、「自己犠牲の精神」について。
ラグビーは厳しいルールの制約上、他のスポーツと比べて、一人の力だけではどうしても勝つことができない。
ラグビーの試合を見ればわかるだろう。
全身にアドレナリンがみなぎり、闘志を爆発させて、目を血走らせながらゴールを目指して一直線。
「仲間のため」「チームのため」という気持ちがなければ、恐怖が先行し、相手に立ち向かって行けるはずがない。
そしてまた、その姿に僕たちは惹きつけられ、気がつけば手に汗を握りながら試合に夢中になるのだろう。
「ノーサイドの精神」を知らずにラグビーを語れない。
この精神を象徴とする試合の終了を告げる笛。
現在は海外では死語になっているが、日本ではそれを「ノーサイドの笛」という。
試合が終われば、敵も味方も関係なくなり、互いのプレーをねぎらい、称え合う。
また、試合中に選手が負傷退場することがあれば、観客は相手選手だろうが、戦う姿勢に敬意を表して拍手をして選手をピッチの外へと送り出す。これこそがラグビーの精神の真骨頂である。
「野獣」と「紳士」の共存を観に行こう
南アフリカ戦の最後のあの10分間。南アフリカは勝利を確信して守りに入る中、日本は引き分けに甘んずることなく、最後のラストプレーで敵の固い牙城を落とし、マンガに描いたような逆転勝利を収めた。
試合終了と同時に泣き崩れる選手の姿は、いまだに人々の脳裏に深く刻まれている。
「ラグビーには人生のすべてが詰まっている」と言う人が少なくない。
「野獣」のように食らいつく姿と「紳士」のリスペクトの精神。
ここまで粋なスポーツをあなたは他に知っているだろうか?
とはいえ、日本においてラグビーは知られ始めたばかり。
ラグビーはきっとこれから4年でさらに多くの人々を惹きつけて、日本に浸透していくに違いない。
ワールドカップのような国際試合だけでなく、日本では「ジャパンラグビートップリーグ」というプロリーグが毎週のように行われている。
基本的なルールと3つの精神を携えて、休日にラグビーの試合へと足を運んでみてはいかがだろうか?