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私語厳禁の喫茶店は…時間の流れがまったく違う静寂な異空間『アール座読書館』

JR中央本線「高円寺駅」。
閑静な住宅街の中に、喫茶、古着屋、古道具屋が軒を連ねる。
落ち着いた空気の流れる、アーティスティックな街並みに佇む1軒の喫茶店。
それが、『アール座読書館』だ。
最大の特徴は、私語厳禁なこと。
喋ったとしても、一言、二言。
しかも、ひそひそ声でないといけない。
だから、店内はシーンとしていて、聞こえてくるのは「ちょろちょろ」と流れる水の音だけ。
ここだけ時間の流れが違うような、異空間が広がっているのだ。
窓の外を眺めながら、ゆっくり読書にひたる。
今回は、1人時間にぴったりのアール座読書館をご案内しよう。

異世界までの道のり。

JR中央本線「高円寺駅」の南口。
右手方向に進むと、地元住民御用達のアーケード『pal商店街』が見えてくる。
両脇に並ぶお店を眺めながら歩いていると、右折できる曲がり角。
その路地を進めば、アール座読書館の小さな看板を見つけられる。
とても分かりにくいので、最初は地図を確認するのが無難だ。

階段を上がり、2階へ。
このワンクッションが、現実世界からの脱出を匂わせる。

左手にある、大きなドア。
外界の音を完全に遮断するよう、分厚くなっている。

覗き穴からは、中の様子がチラッと見える。
冒険心を掻き立てる、子ども心をくすぐる計らいだ。
ドアの重みを感じながら、ゆっくりと、異世界への入り口を開くとしよう。

私語厳禁の喫茶店。

店内に入ると、まるで異空間。
アコースティックな内装に植物が生い茂り、大きな水槽には観賞魚が気持ちよさそうに泳いでいる。
静寂の中で聞こえてくるのは、ささやかなBGMと水の流れる心地よい音色だけ。
「ああ、そうか、確かにここは別世界だ」と、あなたも納得するはずだ。

窓側の席に座る。
天気の良い日は、太陽の差す光が気持ちよさそうだ。

ちなみに、1つ1つの座席には特徴がある。
今回の席は、「愛らしい金魚鉢と緑に囲まれた日当たりのよいお席」らしい。
あなたはどの座席がお好みだろうか。

メニューは、ドリンクが中心。クッキーの盛り合わせなどもある。
注文は自分のタイミング。
お冷/食事の提供時を除いて、店主自らこちらに来ることはないので注意しよう。

さて、一息ついて落ち着いたら座席を調べてみよう。
引き出しを開けてみると……

小さな箱庭が出てくる。
まるで、ジブリ作品の世界を見ているかのようだ。

もう片方の引き出しを開けると、ノートや筆記用具。
らくがき帳には、この席に座った歴代のお客さんたちの想いが綴られている。
「失恋し、悲しかったけれど、アール座読書館に来たおかげで気持ちが落ち着いた……」といった、物語の1ページも。
なかなかの読み応えなので、ペラペラとめくってみると面白いだろう。

アール座読書館のシンボル、それは間違いなく水槽だ。
座席に置かれている金魚鉢には、赤と青の色鮮やかな観賞魚が優遊と泳いでいた。
『ベタ』と呼ばれる魚で、美しさを競い合う国際コンテストもあるそうだ。

店内中央には、大型アクアテラリウム。
目の前にはソファ席があるので、時間を忘れて鑑賞できる。

ちなみに、この大型アクアテラリウムの背後にも座席がある。
誰もこの席に座っていないが、結構穴場。
コポコポと流れる水の音色を、ちょうど頭の位置に感じることができる。
目を閉じると、まるで水の中を泳いでいるかのよう。
「α波でも出ているんじゃないか」と思うほど、リラックスできるのでオススメだ。

店主こだわりの書籍が並ぶ。

読書館と呼ぶからには本がある。
決してたくさんあるわけではないが、いずれも興味深いものばかりだ。

例えば、高橋健司の『空の名前』。
雲、水、氷、光、風、季節の名前が、美しい写真と共に綴られている。
初夏の頃、そよそよと吹いてくる、爽やかな風を「薫風(くんぷう)」と呼ぶなんて、初めて知った。

また、岡本太郎の『強く生きる言葉』。
「読めば必ず力をくれる、岡本太郎がそのままのりうつったような言葉」と、店主がオススメする1冊だ。
既に読んだことがある人も、アール座読書館という空間だと、また違った味を楽しめるかもしれない。
 
ちなみに、『アール座読書館 おすすめブックリスト』もある。
全てではないが、店主のオススメ書籍がコメントと共にまとめられている。
「今、どんな本を読みたい気分かわからなない」というときは、参考にしてみてはいかがだろうか。

おわりに

アール座読書館は、レトロな内装が美しい。
アコースティックなBGMと相まって、居心地の良い空間が演出されているのだ。

座席の引き出しといい、金魚鉢といい、所々にある仕掛けも面白い。
埋もれた宝物を探す、少年のような気持ちになるだろう。
そして、店内をひと周り探検したら、今度は読書を楽しむ大人となるのだ。

もちろん、読書や飲食だけが楽しみ方ではない。
瞑想、仕事・勉強、窓を外を眺める、水槽で泳ぐ観賞魚を目で追う……居座り方はその人次第だ。

「もうこんなに時間が経ったのか」と驚くのも当然。
なぜなら、ここは時間の流れ方が違う、異空間なのだから。

■アール座読書館
住所:〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3丁目57-6
電話:03-3312-7941
営業時間:
平日/13:30~22:30(L.O 22:00)
土日祝/12:00~22:30(L.O 22:00)
定休日:月曜定休(祝日の場合は営業、翌火曜休み)
http://r-books.jugem.jp/
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