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文明開化の香りに触れる。池波正太郎が愛した 明治の面影残る老舗の洋食屋『煉瓦亭』

鬼平犯科帳、剣客商売、仕掛人・藤枝梅安など、戦後を代表する時代小説・歴史小説作家・池波正太郎。
実際に作品を読んだことがなくとも、映像化した作品でふれたことがある方も多いはずだ。
その池波正太郎は、美食家としても名高い。
彼が訪れた名店・老舗は数知れず、東京をはじめ、京都や近江、奈良など、全国に点在している。
そのなかでも、14~15歳の頃から通い続けていたのが、銀座にある老舗洋食店『煉瓦亭』だ。

明治28年創業。明治・大正・昭和・平成と4代に渡り、今もなお多くの常連客から親しまれている。
昭和56年に発行された著書『散歩のとき何か食べたくなって』で、煉瓦亭を以下のように称えている。

少年のそのころからなじんだ店で、いまでも食べに行きつづけている店といえば、資生堂に天國、それに洋食の〔煉瓦亭〕だろう。(中略)銀座の老舗中の老舗だ。

池波正太郎が愛して止まなかった食の遺産。
今回は、彼の回想と共に、煉瓦亭の歴史や魅力をご紹介しよう。

洋食屋の草分け的存在、煉瓦亭。

文明開化の鐘が鳴り響いて間もなく。
明治28年(1895年)に、創業者・木田元次郎が『煉瓦亭』の暖簾を掲げる。

店名は、当時の銀座が煉瓦造りの街だったことに由来する。
明治5年に大火事が起き、銀座一帯が消失。
その後、煉瓦による道路や建物の再開発が進み、銀座は別名「煉瓦地」と呼ばれるようになった。
赤茶色のお洒落な街並みが目に浮かぶ。

また、煉瓦亭が面していたのは、明治時代の象徴ともいえる”ガス灯”が軒並み続いていた通り。
現在は『銀座ガス灯通り』と名付けられている。
まだまだ江戸時代の匂いが残るなか、文明開化の中心地に最先端の洋食店がオープンしたのだ。
創業当時から、新しいもの好きな人たちで賑わっていたに違いない。

老舗……と聞けば、どうしても身構えてしまう。
しかし、煉瓦亭はむしろ真逆。
大衆食堂とまではいかないが、どんな人でも気軽に利用できる雰囲気だ。
ランチタイムには開店前から人が並び、客足が途切れることがない。
年齢層は若干高めだが、私のような20代と思わしき若者もチラホラと見受けられた。
あなたも、ランチは銀座まで足を運んでみてはいかがだろうか。

レトロな内装に、居心地の良さを覚える。

煉瓦亭は、地下1~地上3階の4階建。
外観と共に、店内も明治時代の面影が残る。
額縁に当時の景色を描いたものが飾られていたり、今時珍しいダイヤル式の赤電話が置かれていたり。
1階に置かれているレジはスウェーデン製で、50年以上たった今でも現役である。

また、3階には和室が設けられている。
仕事帰り煉瓦亭を訪れ、靴を脱いでゆっくり足を伸ばしてみてはいかがだろうか。
16:40からのディナータイムもメニューは基本的に同じなので安心してほしい。

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池波正太郎のお気に入りの席は、2階の窓際。

いまも、煉瓦亭の階段をあがって行くとき、二階からただよってくるうまそうな匂いこそ、昭和初期の洋食の匂いにまぎれもない。
現在、こういう匂いのする洋食屋は、煉瓦亭の他に私は知らない。
銀座の老舗中の老舗だ。

窓側のテーブルは3つ。
運が良ければ、彼が食事した席に座り、銀座ガス灯通りを見下ろしながら煉瓦亭の雰囲気を味わえるかもしれない。

創業当時から変わらない味に、舌鼓する。

煉瓦亭の名物といえば、『元祖ポークカツレツ』。
1人前100gの肉を、丁寧に筋切りし、塩・胡椒をふって1日寝かせる。
提供する直前に小麦粉をまぶし、生卵と粗めの生パン粉をつけて油でカラッと揚げる。
揚油には特にこだわりがあり、馴染みのなかったバターや香辛料の代わりに、ラードとコーン油を使ったオリジナルブレンドを開発。
多くの日本人に受け入れられ、昔から注ぎ足して使い続けているらしい。

ここは他の料理もいろいろとできるが、なんといっても皿からはみ出すほどの大カツレツが名物で、私も若いころは、これを三枚は食べたものだ。(中略)狐色に揚がったやつにナイフを入れると、パリッところもがはがれる。これがたまらない。

下味を付けるため、塩・胡椒を前日にふるのがポイント。
ほどよい塩気が、ジューシーな脂身の甘さを引き立ててくれる。

ソースを付けなくても、十分御飯のおかずになる。
結局、最後までテーブルの脇にあるウスター・ソースを使うことはなかった。
しかし、池波正太郎は真逆。
ウスターソースをたっぷりかけて、米飯と一緒に食べるのがやり方だったらしい。
ちなみに、ポーク・カツレツ以外に、決まってウィスキー・ソーダ(ハイボール)を2杯注文していた。
あなたも彼に倣ってみてはいかがだろうか。

煉瓦亭のポークカツレツは、とんかつの祖と称されている看板メニュー。
そのほか、付け合せの千切りキャベツも煉瓦亭が発祥と言われている。
日露戦争が始まって人手不足になり、手間の掛かる温野菜を泣く泣く千切りキャベツに代えた。
それが逆に、「脂っこいカツレツに合う!」と大人気に。
以後、ポークカツレツのお供となったそうだ。

出典: Flickr:othree

また、『元祖オムライス』も明物。
もともと従業員が食べる”まかない料理”だったが、あまりの人気で定番メニューに。
卵で包むのではなく、御飯と具材を卵に混ぜ、一緒にスピーディに焼き上げる。
表面だけが焼き上がり、中身は半熟のトロトロ。
料理人の匠の技を感じさせる。

ポークカツレツが大好き!と豪語していた池波正太郎。
しかし、「煉瓦亭の『ハヤシライス』も格別」と語っている。

煉瓦亭の名物は、いうまでもなくカツレツなのだろうが、私は、この店のハヤシ・ライスも好きである。
こってりと煮込んだのではなく、客に出す間ぎわに、肉と野菜をさっと炒め、ブラウン・ソースと合わせるのではないかと思う。(中略)いかにも、明治・大正の匂いがする。

おわりに

ポークカツレツ、オムライス、ハヤシライス。
煉瓦亭は一度で味わいつくせないほど、魅力に溢れたメニューを提供している。
しかも、いずれも創業当時から守り続けている味だ。

この店の扉を開けたとたんに、ぷうんと鼻先へただよう香りこそ、まさに、戦前の、日本の洋食屋の、なんともいえぬ香りだ。私にとっては、まことに貴重で、なつかしい、うれしい香りなのである。

東京住まいの人はもちろん、観光で東京を訪れた人にもオススメ。
池波正太郎の作品を片手に、明治の面影残る老舗・洋食屋の味を愉しんでもらいたい。

■煉瓦亭
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座3−5−16
電話:03-3561-3882
営業時間:平日11:15~15:00、16:40~21:00(土曜・祝日は20:45まで)
定休日:日曜日
https://www.facebook.com/ginza.rengatei
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