コーヒーをさらに楽しむために……生産国からみる『コーヒーの味わい』の違いを知る。
まずは押さえておきたい、基本の3大産地。
コーヒー豆がどこから来るのか?
普段から何気なく飲んでいると忘れてしまいがちだが、コーヒー豆は世界各国から届けられる輸入品だ。
主に中南米諸国が原産国で、あなたが飲んだコーヒーも恐らくブラジルやコロンビアで作られた豆が使用されているだろう。
日本の農作物が地域・気候によって味が異なるように、コーヒー豆も産地ならではの特色を持つ。
それぞれの特色を押さえておくことで、コーヒー豆を購入する際にはもちろん、既に抽出されたコーヒーを飲む際にも、ひとつの“選ぶ基準”になるはずだ。
今回は代表的な“3ヶ国”のコーヒー豆生産地を紹介しよう。
1.ブラジル ~ バランスの良さがウリ
生産量・輸出量ともに世界一の実力を持つブラジル。
エチオピアからコーヒーの苗木がやってきたのは1727年と伝えられており、本格的に生産が始まったのは18世紀半ば。
1960年代は南部の『パナラ州』で生産されていたが、降りそそぐ霜の悪影響が大きく、1970年以降は『セラード地域』へと北上した。
現在では、代表的なコーヒー豆生産地へとなっている。
ブラジル産コーヒー豆の品質はとても高く、その7割がアラビカ種。
日本で最も多く流通しているのはブラジル産の豆で、馴染み深い。
柔らかな口当たり、スッキリと透明感のある後味、苦味と酸味の絶妙なバランス、そこから生み出される安心感のあるテイストが日本人の口に合っているのだ。
コーヒー豆は、『アラビカ種』と『ロブスタ種』の2つに大きく分けられる。
アラビカ種は、香りや味わいに個性のある高級豆。
ロブスタ種は、酸味が弱くて泥臭い風味が特徴で主にインスタントコーヒーの原料に使われる。
ロブスタ種にも個性があって好む人もいるが、初心者がコーヒー豆専門店で豆を購入する際には、高品質のアラビカ種を選んだほうが無難だ。
また、ブレンドのベースとして使用されることが多く、市場で出回っているコーヒーのほとんどにブラジル産の豆が使われている。
缶コーヒーやコンビニのコーヒーを購入した際には、豆の原産国を調べてみよう。
きっと「ブラジル」の名があるはずだ。
初めて専門店でコーヒー豆を購入する際は、ブラジル産の豆が使われているブレンドを選ぶようにしよう。
ブラックで飲みたい、ミルク・砂糖と合わせたい、そのどちらの要望にも柔軟に応えてくれるだろう。
2.コロンビア ~ 就業人口の1/4がコーヒー生産者
ブラジル、ベトナムに次いで、生産量第3位のコロンビア。
就業人口の4分の1がコーヒー豆の生産に従事しており、国土面積があまり広くないコロンビアにとって大切な産業となっている。
大農園が多いブラジルに対し、小規模農園が複数点在しているのがコロンビアの特徴。
1927年には『コロンビア国立コーヒー生産者連合会』が設立され、品質が一気に向上した。
連合会から派遣される専門家・農業アドバイザーが、各農園のバックアップを担っている。
コロンビアで栽培されているのは、品質の高いアラビカ種のみ。
農園のある地形・気候・地域によって味わいが若干異なるが、基本的には芳醇な甘味、柔らかな口当たり、強すぎない酸味が特徴。
完熟した豆だけを摘み取っているので、トロピカルフルーツのような風味も感じられる。
ブラジル産と同じく、全体的にバランスのとれたマイルドなコーヒーに仕上がるため、日本人受けもいい。
「コロンビア産アラビカ種のコーヒー豆を使用」なんて文言の缶コーヒーを見かけたことがあるかもしれない。
コーヒー豆専門店で、コロンビア産のシングルオリジンが売られるのは珍しい。
味わいにバランスをもたらすため、ブレンドの1つとして使用されていることが多いのだ。
コロンビア産のシングルオリジンを見つけたときは、1度試してみてはいかがだろうか。
生産地を“国単位”で捉えるのではなく、“農園”といった小さい単位で捉えたコーヒー豆。
栽培品種・生産方法へのこだわりが強く、上質なコーヒーを淹れられる豆が選ばれているのが、シングルオリジンだ。
これに対して、『ブレンド(複数の原産国の豆を混ぜ合わせること)』されたコーヒー豆があるが、生産地の特徴を真っ直ぐに味わいたい人はシングルオリジンがオススメ。
しかし、味が整えられたブレンドとは違い、好き嫌いが分かれるので試飲などして慎重に選ぼう。
3.エチオピア ~ 高品質のコーヒー豆・アラビカ種の原産国
魔法の赤い木の実
昔々、ある日のこと。
アビシニア(現エチオピア)にカルディという名のヤギ飼いがいた。
いつものように牧草地で放し飼いをしていたら、ヤギが木々に生えている赤い木の実をパクリ、パクリと食べている。
しばらくすると、カルディは騒がしく、興奮状態になっているヤギの変化に驚いた。
近くの修道院を訪ねてこの不思議な話を伝えると、院長も「なんで?」と首をかしげる。
そこで、「じゃあ、試しに飲んでみようか」と2人で果実を茹でて飲んでみた。
すると、驚くほどに気分爽快で、ハイテンションになるではないか。
これに喜んだ院長は、居眠りしがちな修道僧に飲ませることに。
かくして、「眠らない修道院」と国中に噂が広がり、魔法の赤い木の実を競って求められるようになった。
この物語が、本当にあった出来事かは定かではない。
しかし、ここで登場した“魔法の赤い木の実”こそが、コーヒー豆の正体。
エチオピアには、昔からコーヒーの果実=コーヒーチェリーがなる木『コーヒーノキ』が群生しているのだ。
そして、一部の農園では今でも野生の樹木から収穫している。
エチオピア産の豆で淹れたコーヒーは、フルーティな酸味と上品な甘味を感じられる。
なかでも『モカ』と呼ばれる銘柄はピーチやマスカットのようなスッキリとした味わいが特徴で、日本でも大人気だ。
オススメの抽出方法は、『エアロプレス』。(空気圧を利用する、コーヒー豆本来の味を最大限に引き出せる抽出器具)
エチオピア産の豆を使って淹れると、まるで紅茶のようなスッキリとした味わいになる。
ほどよい酸味が感じられ、雑味は全くない。
ミルクを入れれば、ミルクティーかと勘違いするほどだ。
コーヒーの苦味が好みでない人は、ぜひシングルオリジンで購入してほしい。
おわりに
スターバックスでも、コンビニでもいい。
あなたが日常的に購入しているコーヒーに、どの国の豆が使われているのかを調べてみよう。
そのほとんどがブレンドされているが、「スッキリした味わいだな」と思うならブラジル産だし、「何だか果実のような酸味がある気がする」と思うなら、エチオピア産かもしれない。
香りや味を確かめて、自分なりに想像して、原産国を確かめる。
それだけでも、あなたのCOFFE LIFEが少しばかり豊かになるはずだ。