その火を飛び越して来い…心の中の炎を!年1度は訪れておきたい「火祭り」
人の進化にとって、欠かせないモノを挙げろと言われれば、「火」は代表だろう。
ただ、「火事」を筆頭に人間が恐れたものでもあり、古来より火は、神・神霊として深く信仰されてきた。
日本人は、万物を神として捉えた。
むろん「火」もその例外ではない。
「八百万(やおろず)の神」という言葉が示すように、日本には実に多くの神々が存在し、さまざまな神事が行われている。
中でも、火を焚く祭りが日本全国に多数存在するのをご存じだろうか?
一度はその刺激を味わって頂きたい。
火を見る心理効果を知り、いざ火祭りへ
火には、波の音や風などにも見られる“不規則なゆらぎ”がある。
“1/fゆらぎ”と言われる自然なゆらぎに、心が落ち着いたり、リラックスするという経験は、誰しもあるだろう。
ローソク、暖炉、たき火など、暖色の炎を見ていると、ロマンチックな気分になり、一緒にいる人とお互いの距離が縮まったり、共感しやすくなるなど、炎は、ムーディーな演出、癒し、快感をもたらしてくれる。
その他、集中力を高める効果も挙げられている。
また、キャンプファイヤーや花火などは、癒しだけではない。
激しさが増すほど「高揚感」や「興奮」をもたらしてくれる。
「癒し」と「高揚」。
どちらも人生には大切な感情だ。
日々の暮らしの中で、暖色の炎を見る機会は少なくなっているだろう。
日本各地でおこなわれている「火祭り」に足を運んでみよう。
【4月】手力の火祭(岐阜)
滝のように降り注ぐ「滝花火」の中を、威勢のいい裸男たちが火薬を仕込んだ神輿を担ぎ乱舞する。
神輿に引火すると、夜空に向かって火柱が吹き上がる。
躍動する炎と爆竹の音が、大地の鼓動の如く響きわたる勇壮な祭り。
開催場所:岐阜市蔵前6丁目8-22
手力雄神社
アクセス:「手力駅」下車 徒歩5分
参考サイト:http://www.gifucvb.or.jp/event/detail_spring.php?eid=00004
【7月】那智の扇祭り(和歌山)
「那智の火祭り」の名で親しまれたが、重要無形民俗文化財の指定を機に「那智の扇祭り」となる。
滝の参道に、十二体の熊野の神々の扇神輿を、重さ50kgに及ぶ十二本の大松明の炎により迎え清める神事。
滝の水と炎の舞いが、力強く美しい。
開催場所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
熊野那智大社
アクセス:那智駅からバス「那智山バス停」下車 徒歩10分程
参考サイト:http://kumanonachitaisha.or.jp/event/
【7月】能勢島向田の火祭り(石川)
豊作・豊漁を祈願する神事。広場に設置された約30メートルの巨大な大柱松明に、島民がそれぞれに持った松明を大柱松明に点火。観客も参加できる。
天高く火柱となり、燃え尽きる様は豪快。大松明の倒れた方向により、その年の豊作・豊漁を占う。
開催場所:石川県七尾市能登島向田町
向田崎山広場
アクセス:JR「和倉温泉駅」よりバス・タクシーで10分
参考サイト:http://www.nanaoh.net/p134.html
【8月】夏・手力の火祭(岐阜)
本祭では見られない「地割れ花火」が見どころ。
長良川と金華山をロケーションに、打ち上げ花火を地上で爆発させる。
火の粉が降り注ぐ中を裸男たちが神輿を担いで練り歩く。
半球状に広がる炎と音は、本祭さながらの迫力。
開催場所:岐阜県岐阜市長良橋北詰
長良川公園
アクセス:岐阜駅から岐阜バス「鵜飼屋」下車 徒歩3分
参考サイト:http://www.gifucvb.or.jp/event/detail_summer.php?eid=00018&syu=1&season=summer
【8月】吉田の火祭り(山梨)
「鎮火祭」と呼ばれ、富士山の噴火を鎮める祭り。
また、浅間神社の御祭神が燃え盛る産屋で無事出産したことに由来し、安産・災厄防止のご利益があるともされる。
高さ3メートルの大松明70余本が燃やされ、家ごとに積まれた松明も一斉に点火。
上吉田の街中を炎で埋め尽くすほどの迫力で、祭りは深夜まで賑わう。
開催場所:山梨県富士吉田市上吉田5558
北口本宮冨士浅間神社
アクセス:富士急行線「富士山駅」下車 徒歩3分
参考サイト:http://www.mfi.or.jp/himatsuri/
【10月】ケベス祭(大分)
白装束の“トウバ(当場)”と、奇妙な面をかぶった“ケベス”が火の争いを行う奇祭。
トウバとケベスが火の付いたダシを持って走り回り、参拝者にも遠慮なく火の粉をあびせる。
逃げ回る人々の叫び声が夜空に響き、異様な迫力に非現実の感覚。
火の粉をかぶると無病息災といわれている。
開催場所:大分県国東市国見町櫛来
櫛来社(岩倉八幡社)
アクセス:JR宇佐駅→バス停「古江」下車 徒歩すぐ
参考サイト:http://www.city.kunisaki.oita.jp/site/rokugou1300/kebesumaturi.html
【10月】鞍馬の火祭(京都)
「神事にまいらっしゃれ」の合図で各戸にかがり火が灯される。
「サイレヤー(祭礼や)、サイリョウ(祭礼)」の独特のかけ声をあげながら、子供や若者たちが小・中の松明を担ぎ、最後に大松明を担いだ若者らが現れ、町を練り歩く。
山門前に百数十本もの松明が集まり、夜空を焦がす様は壮観。
開催場所:京都府京都市左京区鞍馬本町1073
由岐神社
アクセス:叡山電鉄鞍馬線「鞍馬駅」徒歩10分
参考サイト:http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/himatsuri/kurama/
【1月】道祖神祭り(長野)
良縁・子宝・厄祓いを祈願する神事。
高さ10数メートル、広さ8メートルの巨大な社殿に、火を付けようとする村人と、阻止しようとする厄年の男衆の激しい攻防戦が見もの。
旧成人の日に行われ、村の男には宿命ともいえる祭り。
日本屈指の大規模な火祭りとして名高い。
開催場所:野沢温泉村 特設会場(馬場の原)
アクセス:北陸新幹線「飯山駅」下車、直通バス「野沢温泉」下車
参考サイト:http://www.nozawakanko.jp/spot/dousozin.php
おわりに
あらゆるものを神として扱った日本人。
神の対象として祭りのモチーフになったのは、「火」ほど多いものはないのではないだろうか。
日本全国で多くの「火祭り」が行われているのは、神聖なものとして崇めたのと同様、またそれ以上に、火が最も「興奮」を得られる、非日常の「ハレ」となるからではないだろうか。
火は、よく“生命力”に喩えられる。
炎は、生きていること、活力の象徴とも言えるだろう。
アナタの心の中の炎をもう1度つけるために、今年、火祭りに足を運んでみてはいかがだろう。