日本男児の特権か？一生に1度は訪れたい神宿る「沖ノ島」

近年、九州本土から約60km離れた“ある島”が注目されたのをご存じだろうか？
「神宿る島」と呼ばれる「沖ノ島」だ。
“古代祭祀（さいし）の跡がほぼ手付かずの状況で保存され、世界的な価値がある”
これにより、【『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群】として、2016年、ユネスコ「世界文化遺産」へ国内候補地として正式提出。2017年の登録を目指す運びとなった。

沖ノ島は、「島そのものが御神体」とされ、一般には一切立ち入ることができない。
無断上陸の際は、刑法が適応されるほど、その掟は厳しい。
だが、年に１度のみ、男性だけが、立ち入りと参拝を許される日がある。
ただし、それは約200余名のみの限定である。
あなたは、すでに「沖ノ島」を訪れたことがあるだろうか？

沖ノ島とは？

沖ノ島は、福岡県宗像市（むなかたし）の沖合から約60ｋｍの玄界灘に浮かぶ周囲4kmの孤島である。
島内には太古の自然が残り、見るものを圧倒する巨大な岩や原生林が立ち尽くし、それらも国の天然記念物に指定されているのだ。

島全体が、「宗像大社」の１つ「沖津宮（おきつぐう）」の神領とされる。
宗像大社は、「沖津宮・中津宮・辺津宮」の三宮の総称である。
それぞれに“宗像三女神”と呼ばれ三姉妹の女神が祀られており、沖ノ島には、長女である田心姫神（たごりひめのかみ）が祀られている。
玄界灘に一直線に並ぶ女神の三柱は、「海の守護神」として祀られている。

沖ノ島の歴史

沖ノ島は、日本列島と朝鮮半島の間に位置し、外交や貿易の要所に位置していた。
500年に渡り、大陸の交流・国家の安泰や海の安全を祈願する「祭祀」が行われていた。
沖ノ島は、東アジアと日本の外交の支柱として、非常に重要な島であったことがうかがえる。

沖ノ島の学術調査が始められたのは1954年。
4～9世紀に及ぶ壮大な祭祀跡が見つかり、12万点にも及ぶ神宝が発掘された。
これらは、国の繁栄と海の安全祈願として、神様へお供えされた奉納品。
銅鏡、鉄剣、勾玉（まがたま）、金製指輪など、約8万点が手つかずで残され、国宝に指定されている。
その規模の大きさから、沖ノ島は「海の正倉院」と称されている。

女性は立入禁止、男性は1年に1日のみ

沖ノ島では、普段はたった1人の神職が10日交代で常駐し、その管理は徹底されている。
そんな中、年に１度、1日のみ、毎年5月27日の「沖津宮現地大祭」での一般参拝が許される。
5月27日は、日露戦争日本海海戦の日である。
戦没者の慰霊と平和を願い、海戦を後世に顕彰すべく大祭が行われている。
一般参加には、その趣旨を理解するという上で門戸を開いている。

沖ノ島は、女人禁制である。
その理由は諸説ある。島に祀られているのは女伸のため、女性の立ち入りに女神が嫉妬するという説。
荒れやすい玄界灘を渡って沖ノ島に行くことは、非常に危険を伴うため、母体を保護する女性への思いやりの意図、という説もある。
とはいえ、男性でも容易に行けるわけではない。
抽選にて約200名程度と限定されているため、年に1度のみのチャンスとなる。

沖ノ島の鉄則

沖ノ島に立ち入るということは、神にお会いするという厳粛な意味がある。
まず、前日には大島の中津宮で祈祷を受け、外界との交流を断ち身を清める。
翌日、沖ノ島に上陸した者たちには、必ず守るべきことがある。

島を守る神職も、朝から禊を行っている。
これら厳格な禁忌と鉄則により島は守られてきた。
それを守れる者だけが、“神の島へ導かれた意味”を見出すことができるのだろう。

おわりに

日々、本当の意味で一人になれる空間などあるだろうか。
立場も属性もかなぐり捨てて、自分と向き合うことなどほとんどできないだろう。
「神宿る島」で一人、神様に向き合い、その存在を五感で感じる。
現代社会では、到底感じることのできないであろう その感覚。
その“感動”は、口外してならないという掟の前に“言葉にならない”とも言われるほどだと。

「沖ノ島」での体験は、選ばれた男性のみの特権。
神秘の島に想いを馳せ、いつの日か訪れてみようと糧にするのも良いだろう。