禅から生まれた言葉「禅語」…言葉から生きる糧を
禅といえば、何を思い浮かべるだろう。
座禅、ジョブズ、マインドフルネスは、最近では人気だ。
ただ、これらを生活の中に取り入れるのは、難しいのが実情だろう。
そこで今回は、禅から生まれた「禅語」をピックアップしてみる。
禅語は、禅宗の僧侶たちの逸話や経典などから取られた言葉。
難しいと思われがちだが、知らず知らず、日本人の生活に根ざしている言葉や教えが数多くある。
なお「一期一会」「元気」「主人公」なども禅語だ。
短い一句の中に込められた、先人たちの禅の心や、悟りの境地に触れてみよう。
1.柔軟心(にゅうなんしん)
~固定観念に囚われない柔らかな心~
自分の考えが正しいと思い込み、他人の意見を聞かないと、一向に視野は広がらない。
相手を思いやる広い心を持てば、見落としていたことに気づくこともある。
凝り固まらず、柔らかな心でいれば、生きやすくなる。
2.日日是好日(にちにちこれこうじつ)
~一瞬一瞬を積み重ねて今日がある~
楽しい時も、苦しいときも、その時々を精一杯過ごす。
後になって、あの事があったから今がある…いい経験をした…と、何かしら必ず身になっているもの。
二度と来ない毎日は、すべてかけがえのない「好日」なのだ。
3.知足(ちそく)
~足りていることに気づけば幸福~
キリのない欲に囚われれば、たとえ裕福であっても、心は貧しい。
時には立ち止まり、欲しがることをやめてみれば、すっと心が楽になる。
あるもので「十分」だと知れば、不平不満から解放され、幸福が満ちてくる。
4.結果自然成(けっかじねんになる)
~結果は然るべくなる~
やれるだけのことを精一杯やったら、あとは自然に実るのを待てばいい。
信念をもってコツコツ取り組めば、結果は後からついてくる。
結果を気にして心を乱す前に、完全燃焼したかが問題だ。
5.平常心是道(びょうじょうしんこれどう)
~ありのままの心で生きる~
平常心とは、意識するものではなく、これというものもない。
自分自身の体験で掴んでいく心。
ぬるい気持ちではなく、普段から、当たり前のやるべきことをやる。
日々精進していれば、いざ何が起きても、自然と「いつも通りのあなた」でいられる。
6.無功徳(むくどく)
~善い行いは黙ってやる~
「してやったのに」と恩に着せたり、打算や見返りを期待してしたことは、何にもならない。
善い行いも、言いふらせば、いっぺんに色あせる。
仕事でも恋愛でも「してあげただけで終わり」と思えば、ラクで清々しい気持ちでいられる。
7.水急不月流(みずきゅうにしてつきをながさず)
~周りに流されず自分を持つ~
川の水は急に流れても、水面に映る月は、決して流されない。
時代や環境が変われば、時に戸惑いを感じることがあるかもしれない。
だが、ブレない軸を持てば、周りに左右されることなく、自分らしい人生を歩んでいける。
8.明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり)
~宝は、自分の手の中にある~
自分の持っている宝は、なかなか気づかないもの。
“自分探し”に翻弄される時、これまで生きてきて、大切にしてきたものを考えてみる。
既に手にしている大事なものに気づき、それを磨いて使えば、本当の宝になる。
9.和敬静寂(わけいせいじゃく)
~相手を敬い、個性を認める~
何事も1人の力には限界があるのだから、人との和、敬う心、清らかさが大切である。
だが時に、妬みや憎しみのような、負の感情が沸くこともある。
渦巻く一時の感情…それがすべてだと勘違いしないよう、心の静けさをもって相手を見直してみよう。
10.非思量(ひしりょう)
~身と息を整えれば心が整う~
不安や怒り、我欲などに心が傾いてしまった時、心をリセットしたい。
だが、何も考えるな、と言われても、考えを止めるのはなかなか難しいもの。
そんな時は、まず「身なりを整える」「真っすぐに座る」「息を整える」。
すると自然に「心」も整う。
おわりに
情報と共に、新しい言葉が日々生まれる現代。
それら新しいものから学び、ヒントとなることも多数ある。
だが、先人達の言葉や知恵には、何百年も生き続ける計り知れない底力がある。
禅語もその1つだ。
今を生きる大切な気づきを得る。
そのキッカケになれば幸いだ。