五月蠅いと思うのはモッタイない!…蝉しぐれに心洗われる「セミの鳴き声」
長かった梅雨も明け、暑さがより一層際立ってきた今日この頃。
屋外に一歩足を踏み出すと強烈な日差しが襲ってくると共に、セミの大音響コーラスが鳴り響くようになってきた。
最初は「お!セミ」と軽く感動を覚えるが、徐々に「今日も鳴いてるなぁ」から「五月蠅い」に変わっていく。
しかし、夏の間、長い付き合いになるセミの鳴き声を騒音として、毎日イラつくのは“粋”じゃない。
そこで今回、夏の風物詩としてセミの鳴き声を楽しむためのコツを伝授したいと思う。
願わくば、夏の終わり、セミが遥か彼方に飛び立つとき、アナタが少しでも名残り惜しく思ってくれることを。
一所懸命に生きる姿に感動すら覚える「薄命のセミ」
知っての通り、セミは夏の昆虫だ。
地域や種類によって例外はあるが、一般的に7月~8月が出現のピークだ。
アナタも子供の頃、夏休みにセミの抜け殻を集めたり、セミを虫取り網で捕まえたりしたのではないだろうか。
しかし、意気揚々とセミを虫カゴに入れて、家に持ち帰ると母親やその他の保護者に言われたはずだ。
「可哀想だから、逃がしてあげなさい」
なぜ可哀想なのかと言うと、セミの成虫の寿命が非常に短いからだ。
野生下でも約1ヵ月と言われているのに、飼育下ではたったの1~2週間の命になってしまう。
土の中で長い年月を過ごし、やっと外に出られたときにセミたちは、何を思ったのだろう。
例え一瞬で命が燃え尽きるとしても、彼らは大空を自由に羽ばたくことを選択したのだ。
その一所懸命に生きる姿を改めて目の当たりにすると、感動を覚えずにはいられない。
セミの鳴き声。実は、愛を囁やく歌だった?
セミの代名詞と言えば、あの鳴き声。
しかし、アナタは知っていただろうか。
実は、鳴いているのがオスだけだったということを。
オスのお腹の中は極端に言うと空洞になっていて、音を振動させることによって、大きな鳴き声を出すことができるようになっている。
なぜそこまでして大きな鳴き声を出したいのかと言うと、これがメスへのアプローチ方法だからだ。
人で言うところの、ラブソング。
「僕はココにいるよ」「君を愛しているよ」と甘い言葉を囁いて、メスを口説き落とすのだ。
この昆虫、意外と肉食系!
世の草食系男子も見習いたいところだ。
一瞬の恋の為に、その命の炎を文字通り燃え上がらせて灰となる。
セミは案外、ロマンチックな昆虫なのかもしれない。
個性豊かなセミの鳴き声をピックアップ
セミの鳴き真似をしてと言われたら、多くの人がこう声に出すと思う。
「ミーンミンミン」
しかし、セミの面白いところは、種類によって鳴き声が大きく異なるところにある。
その鳴き声の違いに耳を澄ませ、それぞれの情緒を楽しんで欲しい。
1.ミンミンゼミ
セミの鳴き声と言えば、ミンミンゼミ。
カンカンと照り付ける太陽の下、この鳴き声を聞くと気分は正に夏真っ盛り!
腹部を上下させて鳴くのが特徴だ。
テンションを上げてくれる、最高の環境音だ。
2.アブラゼミ
ミンミンゼミと同様、盛夏を告げてくれるアブラゼミ。
「ジリジリジリ……」という鳴き声が、油の煮立った音に似ていることからアブラゼミと名付けられた。
都会にも多く生息しているので、この夏、何度も耳にすることだろう。
3.クマゼミ
「シュワシュワシュワ……」
午前中に鳴き、夏の朝を教えてくれる鳴き声。
“クマ”と名の通り、大型のセミだ。
西日本に多く生息しているので、関西圏の人には馴染み深いはずだ。
4.ニイニイゼミ
「チィイイイイイ」という高低のある連続音が特徴。
自然豊かな郊外に生息している。
関東では6月下旬から鳴きはじめることから「夏のはじまりを告げるセミ」とも呼ばれている。
5.ヒグラシ
朝方や夕暮れ時に「カナカナカナカナ……」と鳴くセミ。
ニイニイゼミと同じく、こちらも自然豊かな郊外に多く生息し、関東では6月下旬から鳴きはじめる。
哀愁漂うロマンチックな鳴き声で、大勢のファンを抱えるセミ界のアイドルだ。
6.ツクツクボウシ
他と一線を画す、非常にユニークな鳴き声!
「ツクツクボーシツクツクボーシ」と腹部を忙しなく揺すりながら鳴く。
お盆過ぎからの数が増え、夏が終わりに近づいていることを感じさせてくれるセミだ。
おわりに
セミは、今日も元気に鳴いている。
一瞬の恋にその命を燃やし、ラブソングを歌っている。
だからあまり「うるさいなぁ~」と邪険にせずに、一人の聴衆としてそっと見守ってやって欲しい。
それぞれが個性豊かな鳴き声で歌うので、その違いに耳を澄ませて楽しんで欲しい。
それこそ、四季の移り変わりや自然を愛する、日本人の“粋”ではないだろうか。
気がついたときにはもう、来年の夏、またセミに出会える日を心待ちにしているアナタがいるはずだ。