古本屋の魅力を味わうための9つのステップ。
日本は古書大国と言われている。
最近は古本チェーンやオンライン古書店の登場により、個人経営の古本屋が圧迫されつつあるものの、まだまだ、毎日の通勤・通学路で、ふと通り過ぎた街で、古書店を見かけることは多いだろう。今回は、筆者流の古本屋の楽しみ方についてご紹介したい。
その一、古書街に行く。
町中にぽつん、と佇む古本屋に行くのも楽しいけれど、いくつかの古本屋を“ハシゴ“できるのが古本屋街のなによりの魅力だ。
取り扱っている本も、特化しているジャンルも、本につける値段も、本屋によってすべて異なっているので、ハシゴするなかで自分にぴったりの本屋をみつけることができる。
東京では神保町・本郷・早稲田、大阪では阪急梅田駅のかっぱ横丁、名古屋では鶴舞、京都では今出川や河原町通五条から丸太町にかけてなどが有名である。
大学のある本郷や早稲田は学術書が特に豊富など、街によって置かれている本の傾向も違うので、いろいろな街を訪れてみるのも楽しいかもしれない。
その二、「古い」だけが古本屋じゃない。
古本屋の種類もさまざま。
本がところ狭しと積み上げられた、一見倉庫のようなお店や、まるで輸入雑貨屋かカフェと見間違えるような古書店も増えてきている。
なんとなく入りづらい、という人は後者のようなお店をまず選ぶとよいかもしれない。若いオーナーである場合が多く、比較的ポピュラーな本を中心に扱っていることが良く見受けられるので、古本屋を楽しむ第一歩として最適である。
その三、匂いも楽しみの一つ。
古くなった紙がかもしだす、ほんのり甘い匂い、そしてずらっと並んだ本の隙間に積もったほこりが、古本屋独特の雰囲気をつくりだしている。
しんと静まり返った店内、なんとなく懐かしいその匂いをゆっくりと吸い込むと、幼い頃、お気に入りの絵本をずっと眺めていた時や、小学校の夏休みに、図書館で過ごした時のような、本にまつわる思い出が蘇ってくることだろう。
その四、オーナーのキュレーション力も、古書店の魅力。
名前順・出版社順など、本が規則正しく並べられたふつうの本屋とは違い、古本屋の本の並び方にはオーナーの強いこだわりが反映されている。
一見無関係な本同士がとなりにおいてあることもしばしば。本棚の陳列それ自体が、オーナーの魂込めた編集の成果であり、作品とさえいえるのだ。
チェーンの古本店にはない、個人経営の店だからこそのキュレーション力を味わいながら、普段なら読まないような本を手に取ってみよう。
その五、ディスカウント・コーナーをチェックしよう
多くの古本屋では、在庫が増えすぎた本や買い手がつかない本などが店先で安く売られている。
多くは50円~200円程度に値下げされているので、気軽に購入することができる。ここではじめての一冊を選んでもいいかもしれない。
ちなみに筆者の古本屋の楽しみ方の一つは、「今日は500円以内で、できるだけいい本を多く買う」などのテーマを事前に決め、ディスカウント・コーナーをハシゴすること。
これだ、というものを探し出すため、本を比較し吟味する作業はこの上なく楽しいものである。
その六、古雑誌の中に、時代を超えた「粋」を発見せよ
古本屋を訪れる際におすすめしたいのが雑誌コーナー。
誕生年のMen’s NON-NOや今では廃刊になったオリーブなど、滅多に見かけないバックナンバーを手にすることができる。雑誌のレイアウトや取り扱われているトピック、文体のすべてがその時代の流行をあらわしている。ちょっとしたタイムスリップ気分を味わえるだろう。
今においては奇妙に思えるようなファッションや流行記事を眺めるのも面白いが、中には時代を超えて、かっこいいと感じられるスタイリングやモデルを見つけることができるかもしれない。
その七、直感で、なんとなく気になる本を手に取ろう。
タイトルや装丁、本の帯など、なんとなくこころ惹かれる要素をもつ本を手に取ってみよう。
古本屋の魅力は、本が整然と並べられたふつうのお店にはない「偶然の出会い」が多くあること。そしてもう日本のどこを探しても売っていないような海外の絵本や、数十年前に絶版になった小説など、ほかの本屋で手に入らないものも多く取り扱われていることだ。
アマゾンがあなたの閲覧履歴から好みを予測して勧めてくれる本や、自分の目的に沿って最適な本を選ぶのもよいけれど、ふと理由もなく選んだ本が、後々の人生を大きく変えることだってある。
予定調和に陥りがちな毎日の生活に穴をあけ、あなたの世界をぐんと広げてくれるだろう。
その八、元の持ち主の痕跡は、新たな視点を得るヒント。
古本の醍醐味は、前の持ち主の痕跡をさがす作業。
なんでこんなところに、というところに引いてある線や、ふと書き留められたコメント、特にしわの入ったページ、挟まったメモなど、持ち主の痕跡を随所に見つけられる。
本を読み進める中で、その線を引いた理由がわかることも。読書は孤独な作業だが、一度、誰かの手の中にあった本を読むのは、その人と対話をしながら読んでいるような楽しさがある。
その九、オーナーに声をかけてみよう。
古書店のオーナーたちはもちろんその道のプロフェッショナル。
どの本を選べばよいか、どうやって本を選べばよいかなど質問をし、彼らの膨大な知識と深い考察のお裾分けをしてもらおう。一見、物静かに見えるオーナーも多いが、話しかければほとんどいつもフレンドリーに接してくれる。
一人では知りえなかったような本に出会えることだろう。