全ての重圧から開放される…神の存在を感じる究極の”1人になれる空間”
足を踏み入れた瞬間、全身に鳥肌がたった。
それは、外よりも気温が低いだけの理由ではない。
あまりにも大規模、あまりにも神々しく、あまりにも非日常の空間だからこそだ。
東京都文京区関口にある『カテドラル関口教会 聖マリア大聖堂』は、まさしく神が舞い降りるに相応しい場所だ。
ここに足を踏み入れたとき、私達は否応なしに祈りを捧げたくなる。
それは、ステンドガラスから差し込む光が天に届く柱に見えるからかもしれない。
現在、日本には16の教区がある。
それぞれに司教(大司教)がいて、一堂に会して教区全体の行事・集会を行う場所を『カテドラル(司教座聖堂)』と呼ばれる。
つまり、カテドラル関口教会はカトリック教会の中心的な教会。
聖域と称するに相応しい場所なのだ。
そんな貴重な教会だが、なんと一般の出入りは自由。
ふらり散歩がてら立ち寄ることができる。
家庭と仕事の両立に少しだけ疲れてしまった。
あらゆる重圧から開放されたい。
都会の雑踏に疲れた。
そんな、何かを抱える人にこそ訪れてもらいたい。
今回は、カテドラル関口教会 聖マリア大聖堂の魅力をご紹介しよう。
目を閉じて、生を感じる。
大聖堂の中に入り、まず驚くのは規模の大きさ。
約40m(オフィスビル10階分)の高さになる天井から、柔らかな光が差し込む。
薄暗く、肌寒い空間も相まって、より幻想的な雰囲気を作り出しているのだ。
前方には、広い祭壇と16mの十字架。
背面の大理石から差し込む光が、神の降臨を想像させる。
後方には、日本最大のパイプオルガン。
大小多数のパイプに風を送り込み、大聖堂全体に美しい音色を響かせる。
2004年の献堂40周年記念を際に、新しくデザインされたものらしい。
そして、中央には礼拝用の椅子が並ぶ。
聖堂の中をひと周りしたら、実際に座ってみよう。
オススメは、建物の真ん中に位置する付近。
まずは、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
そして、目を閉じ、心を鎮め、すぅと息をする。
頭の中を空っぽにし、空間に身を委ねるのだ。
そして、空気と一体化したのを感じたら、ゆっくり天井を見上げてみよう。
頭上にある大きな大きな十字架。
その存在感に、あなたの心はきっと動かされるはずだ。
カテドラル関口教会のディスプレイ。
大聖堂をひと周り。
まず、左側にあるのがマリア祭壇だ。
この場所だけ空気感が別物で、ひんやりとした肌寒さのなかに、どこか温かみを感じる。
頭上から差し込む光のせいだろうか、いずれにせよ、神秘的なマリア像は美しさの極みだ。
右側には、ピエタ像が置かれている。
ピエタとはイタリア語で「悲哀」を意味し、御母マリアがキリストの亡骸を膝に受け、悲しみの中でかぎりない愛を瞑想する姿を現している。
ミケランジェロ作品の原寸大レプリカだ。
“世界のタンゲ”が築いた、日本最大の大聖堂。
あまりの大きさに驚く、カテドラル関口教会 聖マリア大聖堂。
実は、建築作品としても有名なのをご存知だろうか。
設計したのは、”世界のタンゲ”こと、建築家の丹下健三。
戦後の日本近代建築における、最も著名な建築家の一人だ。
国際連合大学、フジテレビ本社ビルなど、数々の建築作品を手がけ、1964年にはカテドラル関口教会 聖マリア大聖堂の竣工を迎えた。
大聖堂は、8面の双曲放物面シェルを垂直に近く立てた構造。
横から見れば不思議な形をしているが、実は、真上から見ると十字架の形をしている。
大聖堂の隣にある鐘塔も見事。
ドイツから輸入された4つの鐘が鎮座しており、制作者が日本各地の鐘の音色を研究。
日本的な、日本人のための音色を出せるよう、強いこだわりが活かされている。
2005年、91歳で亡くなった丹下健三。
その葬式は、この大聖堂で行われたそうだ。
自ら設計した場所で、自らを弔う、そんな丹下健三の行き様も感じられるだろう。
おわりに
カテドラル関口教会 聖マリア大聖堂では、平日・休日問わずミサが行われている。
信仰がある人はもちろんだが、そうでない人も「心を洗う」という目的で参加してみてはいかがだろうか。
また、不定期ではあるが、夜の時間帯に音楽会を開催。
パイプオルガンの音色と生演奏によるレクリイエムが大聖堂いっぱいに響き渡る一時は、心に深く刻まれるだろう。
1人の時間をゆっくり過ごしたいのなら、訪問者の少ないお昼時やミサが終わった朝の時間帯がオススメ。
“1人になれる空間”として、リフレッシュするために、ぜひ訪れてほしい。