真のリーダーとは?新撰組・副長「土方歳三」の生き様から“男気”に触れる
幕末の波に呑まれ、35歳の若さでこの世を去った土方歳三。
“鬼の副長”と部下から恐れられ、己の進むべき道を貫いた男である。
江戸から明治へ変わるとき、坂本龍馬や中岡慎太郎など激動の渦に巻き込まれ命を落とした若き志士は多いが、土方も時代に身を捧げた一人である。
土方の生き様に学ぶこと、それは“リーダー像”にほかならない。どのようなポリシーをもって生き、どんな人物だったのかを確かめながら土方からリーダー論を考察してみよう。
リーダーとしての生き方
土方は裕福な農家の子に生まれ、本来なら武士にはなる身分ではなかったが近藤勇や沖田総司らと共に試衛館で剣術を学び、徳川家茂警護の浪士組になるべく京都へ出立する。
しかし、しばらくして浪士組は分裂し、将軍から「新撰組」の発足が申し渡されると土方は副長となり、また、土方の推薦で大将(局長)は近藤勇が務めた。
新撰組といえば近藤を一番に思い浮かべるだろうが、知恵があり策士である土方がいなければ組の統率は難しかったであろう。
つまり、新撰組の屋台骨は土方と言える。
自分が認めた人は何があっても裏切らず、決めた道は貫き通す誇りと信念がある。
けれど堅物ではなく、柔軟な姿勢で物事を見ることができ、目先の損得で動かない男であった。
土方の信念は「武士よりも武士らしく生き、新選組を天下一の組織にして近藤勇の名を世間に轟かせる」こと。そして、転機となった出来事が1864年の池田屋事件。
反幕府の長州・土佐の志士40名が密会していた池田屋を襲撃し、治安維持に貢献したとして新撰組は京都見廻り組と同じ立場へと昇格し、正式に武士として幕府に認められたのだ。
その後も反幕府軍の成敗に尽力し、名実ともに新撰組と近藤の名は世間に広まっていく。
近藤の人望や斎藤一、沖田総司など剣術に優れた隊士の活躍もあったが、土方の統率力や管理能力が新撰組を支えていたことは間違いない。
また、土方は鬼の副長として有名だが、ただ単に厳しいだけでなく新撰組の隊士・中島登が記した戦友絵姿には「赤子が母親を慕うように接してくれた」と書かれている。
カリスマ性よりも有言実行
言い方は悪いが、土方はカリスマ性で組織を引っ張るタイプではない。
目標=信念を定め、優先順位を決め、ルールを徹底し、それを維持することでリーダーシップをとっていた。
そして、常に責任をとる覚悟ができていた。一度決めれば、なんとしてでもゴールを目指し、失敗したときには責任をとる。地位や立場に依存することなく、責任の所在が自分にあることを心得ていたのだ。
優れたリーダーは自分にも周りにも厳しい。物事がうまく運ばないときには、その失敗を人のせいにせず自分で責任をとる覚悟ができている。
そして、最終的に自分が責任を負うことを知っているから部下を恐れたりしない。
毅然とした態度で統率に必要なルールを部下に課せ、軸がブレないように管理するのである。
しかし、見かけ倒しのリーダーはブレる。能力が高い部下を恐れ、追放しようとする。
優れたリーダーは心強い部下を求め、その能力を組織のために発揮させるのが上手い。
見かけ倒しのリーダーは部下の失敗を部下の責任にするが、優れたリーダーは自分の責任と捉え、部下を責めたりせず良い方向へ軌道修正させるのが上手いのだ。
ビジョンを明確にしていた
信念や行動が一貫性をもっており、それに価値があると賛同した部下が集まったときにリーダーが生まれる。
信念や行動を部下に示すには、ビジョンを明確にしなければならない。
組織を率いるうえでビジョンは重要。ビジョンは可視化できる数字や目標ではなく、組織の一人一人が価値を見出せるような、努力したくなるような“目標”でなければならない。
土方の場合、「武士よりも武士らしく生き、新選組を天下一の組織にして近藤勇の名を世間に轟かせる」という目標が組織の舵をとるビジョンになっていたのだ。
さらに、失敗したとき、それは戦略が間違っていたのか、部下の心を動かせなかったからなのか、責任の所在が自分にあることを自覚している。
責任とは、信頼と背中合わせである。
ビジョンを掲げたならば、それを実行することがリーダーの責務であり、責任をとる覚悟があるからこそリーダーとして認められる。
そうした点からすると、土方はビジョンに向かって行動する実行力があり、責任に対する想いが人一倍強かった人物と言えるだろう。
土方歳三に学ぶリーダー論とは
土方という男を一言で表すなら、武士よりも武士らしく生きたいと願った幕末最後の勇士。
男気に溢れ、決めた道は貫き通す誇りと信念がある。
土方に学ぶリーダー論とは、「ブレずに突き進む」こと。
優れたリーダーになるために必要な課題として、次のようにポイントをまとめることができる。
・自分が認めた人は何があっても裏切らない
・柔軟な姿勢で物事を見ることができる
・目先の損得で動かない
・優れたリーダーは自分にも周りにも厳しい
・ただ単に厳しいだけでなく愛情をもって接しなければならない
・目標=信念を定め、優先順位を決め、ルールを徹底し、それを維持できる
・物事がうまく運ばないときに失敗を人のせいにしない。
・失敗は自分の責任と捉え、部下を責めたりせず良い方向へ軌道修正できる
・心強い部下を求め、その能力を組織のために発揮させるのが上手い
組織においてリーダーは必要不可欠な存在。
リーダーの力量や質で方向性が良くも悪くもなる。
優れたリーダーになるための心得を、ぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。