広大な宇宙に思いを馳せる…東京・三鷹「国立天文台」
世界最先端の観測施設を擁する日本天文学のナショナルセンター『国立天文台』。
大学共同利用機関として、全国の研究者と協力し、観測・研究・開発。
昼夜問わず、天文学の発展のために尽力している。
その本部が、東京都三鷹市の小高い丘にある。
最先端技術を結集させながらも、大正期の歴史的建造物を数多く保管。
緑豊かで自然との共生も果たす「国立天文台 三鷹キャンパス」の魅力を伝えたいと思う。
国登録有形文化財がズラリ
「国立天文台 三鷹キャンパス」は、その歴史的価値から国の登録有形文化財に選ばれている建物を数多く擁している。
1.第一赤道儀室
1921年建設(設計:東京帝国大学営繕課/施工:西浦長大夫)
三鷹キャンパスの中で、最古の建物。
口径20㎝屈折望遠鏡と太陽写真儀(カメラ望遠鏡)が設置された観測室だ。
赤道儀は、日周運動で動く天体の動きに合わせて星を追尾する架台のこと。
1938年から今日までスケッチによる太陽黒点の観測、太陽写真儀による太陽全体の写真撮影が行われている。
天気の良い日は、研究者が観測を行っているので、直接色々と説明を聞くことができる。
2.天文台歴史館(大赤道儀室)
1926年建設(設計:東京帝国大学営繕課/施工:中村與資平)
高さ19.5m、ドーム直径15mの巨大な建築物。
半球ドームは、船底を造る造船技師の力を借りて作られた。
2階には、日本最大の口径を誇る65㎝屈折望遠鏡が展示。
その圧倒的な大きさに、度肝を抜かれるはず!
1998年に引退したが、現在でも観測可能な状態だ。
その他にも様々な歴史的資料が展示されている。
例えば、あのガリレオ・ガリレイの望遠鏡(レプリカ)。
人類で最初に望遠鏡での天体観測を行った、ガリレオの望遠鏡を精密復元。
驚くことに、実際に使用することができるらしい。
3.太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)
鬱蒼とした森を抜けた先に、その塔は佇んでいる。
1930年建設(東京帝国大学営繕課/施工:中村工務店)
一見してわからないが、この塔全体が望遠鏡の筒の役割を果たしている。
建物がほぼ直線で構成され、塔内部は吹き抜けだ。
太陽光がシーロスタット(2枚の平面鏡)で垂直に取り込まれ、鉄骨やぐらに固定される望遠鏡で収束。
その後、半地下の大暗室でプリズムや回折格子を使用し、太陽光をスペクトル(虹色の光)に分けて観測している。
ちなみに「アインシュタイン塔」の由来は、ドイツのポツダム天体物理観測所のアインシュタイン塔にある。
もちろん、最先端技術も!
こちらは、次世代大型望遠鏡の主鏡分割鏡の試作品。
なんと口径30mの主鏡を持つ超大型望遠鏡の建設計画が進行しているらしい。
492枚の鏡を合わせて形作り、すばる望遠鏡などの8m望遠鏡と比べて解像度が4倍、光を集める能力が10倍に!
日本の、いや、世界の天文学の歴史が変わることになる。
完成するまで、固唾を呑んで見守ろう。
140億分の1の星間飛行を! 太陽系ウォーク
第一赤道儀室と天文台歴史館を繋ぐ道が、太陽系ウォークになっている。
この道、なんと太陽系の距離を140億分の1に縮めた展示なのだ。
太陽から土星までの実際の距離は14億km。
それに対して、太陽系ウォークは100m。
1歩約50㎝(700万km相当)で、土星まで200歩で到達できるようになっている。
惑星パネルには、14億分の1サイズの模型も!
距離や大きさを体感できる仕組みだ。
140億分の1の星間飛行を是非楽しんで欲しい。
おわりに
国立天文台では、定例観望会や4D2Uドームシアター(最新宇宙像、全天周立体視ドーム)の公開なども行っている。
こちらは事前に予約が必要なので、興味がある方はHPをチェックして欲しい。
夜空を見上げると星はあるのに、手を伸ばしても届かない…。
天体に関して、我々は“身近で遠いモノ”という認識がある。
だが、観測機をはじめ、宇宙に関する研究は日々着実に進んでいる。
いつか人類は、大いなる宇宙へと旅立つだろう。
まずは「国立天文台 三鷹キャンパス」を見学してみてはいかがだろうか。
住所:〒181‐8588 東京都三鷹市大沢2‐21‐1
Tel:0422‐34‐3600(代表)
見学時間:午前10時~午後5時(入場は午後4時30分まで)。
入場:無料の自由見学。少人数の場合、予約不要。
アクセス:「武蔵境駅」「三鷹駅」「武蔵小金井駅」「調布駅」からバス。「天文台前」下車。
HP:http://www.nao.ac.jp/