クラゲ展示数世界一! 山形県・鶴岡市立加茂水族館が紡ぐ、波乱万丈の逆転劇とは?
2005年。
山形県鶴岡市にある小さな水族館が世界に知れ渡った。
約50種類ものクラゲを展示する『鶴岡市立加茂水族館』。
展示数が世界一となり、ギネス認定に登録されたのだ。
約2,000匹ものクラゲが悠々と泳ぐ大水槽をはじめ、今まで見たことのない種類のクラゲを鑑賞したり、生態系を学べたり、実際に触れたり、食べてみたり。
クラゲにおいて右に出る者はいない、
まさしく”クラゲ水族館”の異名に相応しい水族館として人気を集めている。
2014年にリニューアルオープンした加茂水族館。
ずっと人気絶好調だと思われがちだが、その歴史は波乱万丈。
数々の困難を乗り越え、起死回生の逆転劇を経ているのだ。
今回は、その物語を語ると共に、加茂水族館の魅力について迫ってみよう。
世界一のクラゲ水族館
山形県鶴岡市にある加茂水族館。
クラゲの展示種類の多さがギネス記録に認定されている、クラゲ水族館。
2014年のリニューアルオープン時は30種類程度だったが、現在では50種類以上ものクラゲが神秘的な世界観をつくりだしている。
暗がりの展示ブースは、まるで深海に迷い込んだかのよう。
彩り豊かなライトアップによって魅せられたクラゲたちが、悠々と漂っている。
なかでも目玉となるのが、直径5mにもなる大水槽”クラゲドリームシアター”。
約2,000匹ものミズクラゲが浮遊する光景は、歓声をあげずにはいられない。
なにもかも忘れて、ただただ見入ってしまうことだろう。
“落ちこぼれ”と蔑まされたときもあった
最近、出来たばかりの水族館。
そんなイメージを抱きがちだが、加茂水族館の開設は1930年。
85年以上もの歴史を培ってきた老舗だが、幾度も試練を乗り越えてきた。
そもそも、加茂水族館は民間が始めた水族館。
1964年に現在の場所に新築移転され、そのときは20万人以上の入館者が集まる人気スポットのひとつだった。
順調に運営を続けていたも束の間。
1971年には、管理していた民間会社の経営不振が要因で閉館に追い込まれてしまう。
そのあと、オーナーが変わって運営を再スタート。
しかし、時は既に遅し。
周辺に大型の水族館が続々とオープンし、以前のような人気回復には至らなかった。
ついには”落ちこぼれ水族館”というレッテルまで貼られてしまうほど、
加茂水族館の経営は危機的状況に陥ってしまったのだ。
もうこれまでか……と誰もが諦めかけたとき、加茂水族館は見事な逆転劇をみせる。
そこに深く関わっているのが、1967年からリニューアルオープン前まで館長を務めていた村上龍男氏。
加茂水族館を世界一のクラゲ水族館に導いた、その人である。
諦めずに、何度もトライする粘り強さ
いかにして、加茂水族館を復活させたのか。
その秘密は、村上氏の諦めず何度も挑戦する、粘り強さにある気がする。
落ちこぼれ水族館が、どうやって世界一の水族館になったのか。
その経緯を取材してまとめたある記事には、下記のようなことが語られている。
ある児童が『なぜ、諦めないで続けたのですが』とズバッと質問すると、村上館長は『本当のところ、もうダメだと諦めていました。
ただ、自分だけ逃げるわけにはいかなかった。
そんな一番苦しいときにクラゲと出会ったんです』としんみり語った
出会ったタイミングは、村上氏曰く、”最後の悪あがき”のとき。
当時流行っていたサンゴの企画展を、最後のチャレンジとして敢行したのだ。
しかし、入館者数は9万人ほど。
過去最低の記録を残し、失敗に終わったのである。
全てを諦めかけたそのとき、係り員の一人がサンゴの水槽に小さなクラゲを発見。
試しに育てて繁殖させ、展示したところ、お客さんが大喜び。
手応えを掴んだ。
村上館長は『真っ暗闇の中で座して死を待っていた。
クラゲが現れなかったら、終わりだった。
神様がクラゲに変わって現れたように思えた』と、しみじみ語る
諦めずに、何度もトライし続けること。
でなければ、クラゲという神様に出会うこともなかった。
水族館をなんとかして残したい。
そんな村上氏の想いと粘り強さが、ビジネスチャンスを掴むに至ったのである。
山形県にある、世界一の水族館。
その背景に波乱万丈な物語があると知れば、また違った見方ができるはずだ。
おわりに
そもそも、私達はクラゲという生態について無知である。
なかには危険を伴うものもいるが、
しかし、いずれにせよ、海を漂う彼らの姿は天使が舞っているかのようだ。
もちろん、クラゲ水族館というからには、生物学的な観点から、その魅力や生態系の解説なども充実している。
そのほかの水生生物と触れ合えるキッズスペース、ウミガメ水槽、アシカショーなど、家族を連れて訪れるのもおすすめ。
子供以上にはしゃぐ自分に驚くかもしれない。
今夏、旅行先に迷っているなら山形県に足を伸ばしてみてはいかがだろうか。
住所:〒997-1206 山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
TEL:0235-33-3036(営業時間内)
FAX:0235-33-1129
URL:http://kamo-kurage.jp/